レビュー

私たちはときに未曾有の事態に巻きこまれる。日本列島を揺るがし東北地方を中心とした広い地域の日常を奪い去った東日本大震災や、またたく間に世界に蔓延して世界中の人々と経済を恐怖と混迷の沼に引きずりこんでいる新型コロナウイルスはその一例だ。

こうした異次元の危機を目の当たりにして、未知への驚異を抱き、未来に不安を抱くのは当然だ。
著者は、そうした極限(エクストリーム)の逆境から驚異的な「立ち直る力(レジリエンス)」と創意工夫で復興を果たした人たちから貴重な教訓が学べるという。世界中から「極限」の地で暮らす人たちを探し出し、地域経済を動かす力を観察、レジリエンスに及ぼす影響などをまとめたのが本書だ。
取りあげられている地域は9つ。再生、失敗、未来の3つに分類されているが、本要約ではそれぞれから1つずつの地域を紹介した。〈再生〉では、自然災害で公式経済が壊滅状態に陥りながらも非公式経済と人的資本をうまく生かしながら復活した地域。〈失敗〉では、ポテンシャルをもちながら発揮できていない地域。〈未来〉では、高齢化が進んだ未来の姿をうかがい知れる地域だ。
国の文化や歴史、資源、そして極限の状態はさまざまに異なる。ただ、どんな環境にあってもレジリエンスは発揮しうるものである。本書が明らかにするレジリエンスの経済学を学ぶことで、私たちは未来への不安やストレスを軽減できるだろう。これから先の不確実な未来への備えとして必読の一冊だ。

本書の要点

・本書は、極限(エクストリーム)経済に焦点を当て、立ち直る力(レジリエンス)について考察するものである。
・再生、失敗、未来の3つの観点で、すでにエクストリーム経済を経験している地域を取りあげる。物質的あるいは心理的な極限状態のなかにあって、人はどのようにレジリエンスを発揮し立ちあがるのか。反対に、レジリエンスを発揮できないのはなぜか。極限の場所から重要な教訓を学ぶ。
・これから世界が進んでいくのは新しいレジリエンスの経済であり、人的資本、社会資本はきわめて重要な役割を果たす。



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