レビュー
従来の経済学は、人がきわめて合理的に行動することを前提としている。そのような単純化されたモデルを想定することで、GDPや金利、雇用などマクロ的な経済現象を把捉しやすくなる。
過去をさかのぼれば「経済学の父」アダム・スミスからはじまり、マルクス、ケインズと経済学は時代とともにその形を変容させてきた。その意味では経済学から行動経済学への関心の移行は、今の時代を反映しているといってもいいだろう。大量生産から多品種少量生産へと経済事情が変わり、IT技術の発展も大きな変化を生んでいる。複雑な個人の意思決定プロセスを解明する上では、ビッグデータの活用も欠かせない。
本書はそんな行動経済学の入門書だ。さまざまな実験や事例が紹介され、初学者には最適の本といえる。もちろん入門書といってもアカデミックな内容であることは間違いなく、分厚くはないものの中身は濃い。読みごたえはしっかりとある。
職種を問わず、仕事にも行動経済学は深く関連してくる。
本書の要点
・従来の経済学では、人を「合理的で数的計算を正確にこなす生き物」として扱う。一方、行動経済学は人の「合理的意思決定の限界」に着目する。
・行動経済学におけるモチベーションは、外発的なものと内発的なものにわけられる。この2つは相互に複雑に関係しており、人の意思決定に大きな影響を与えている。
・ヒューリスティクスは迅速に意思決定をするための手段である。だが、ヒューリスティクスを使うことで、誤った選択をしてしまうこともある。また、意思決定には一貫性がないことを前提に考える。
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