レビュー

コカ・コーラの次によく飲まれているソフトドリンクをご存じだろうか。それはレッドブルだ。

もともとレッドブルは、「決しておいしくなく、量も少なく、価格も高いドリンク」として開発されたという。到底そんなものは売れないと普通は考えるだろう。しかし実際には年間60億本を売り上げる、世界的にも人気の飲み物となっている。合理的な発想だけをしていたら、レッドブルは決して誕生しなかった。一見非合理的な行動が、イノベーションを生む――これこそが本書のキーメッセージである。
著者のローリー・サザーランド氏は、世界的にも有名な広告代理店の英国支店の副会長だ。本書では、最新のケーススタディなどを豊富に交えつつ、ロジカルを超えた人の心理(サイコ)ロジカルに焦点を当てている。
日本でも近年、「合理的であること」の是非はたびたび話題になる。「結婚はコスパがいいのか」という問いも、その類と言えるかもしれない。コロナ禍でリモートワークが一般的になり、経営合理化の一環で脱オフィスをする企業も増えた。
無論、さまざまな意見があってしかるべきであり、合理的に考えることの意味は依然として大きい。だが合理性・効率性の追及は、あくまで「いま見えている部分」を最適化するだけにすぎないことを忘れてはならない。
インターネットを使えば膨大な情報にアクセスできるが、だからといってインターネットにある情報が世のすべてではないことと同じである。行き過ぎた合理主義に一石を投じる、きわめて重要な一冊である。

本書の要点

・ロジカルであることは人に安心感を与えてくれる。しかし現実は複雑であり、ロジックを超えた非合理的な解決策が無数にある。
・人が非論理的な行動をとる理由は、「シグナリング」「潜在意識のハッキング」「満足化」「心理物理学」の4つの原理で言い表すことができる。
・これまでとは異なる方法をとることで、幸運な偶然を享受できるチャンスが生まれる。ロジックを手放し、人の無意識の動機に着目すれば、これまで見えていなかった解決策が見つかるかもしれない。



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