レビュー

本書のタイトルでもある「進化思考」は、生物の進化と私たちの創造は相似形の構造であるという著者の洞察から生まれた新しい創造的思考法だ。
生物の進化は、変異と適応を繰り返すと自然発生する現象だ。

遺伝子のコピーエラーから生まれた変異のなかからは、自然とその状況の空間的関係と時間的関係に適応したものが傾向として生き残りやすくなる。その往復を繰り返すと形態は自然と収斂し、ときには生存戦略が分岐する。それが生物の進化だ。そして進化思考は、進化と創造を類似の現象と捉えて創造性の根源的な構造を探求する手法だ。こうした構造に立てば、捉えるのが難しい創造性も、進化と同じように構造化できる。
つまり創造性とは、変異的思考によって偶発的に無数のアイデアを生み、適応的観点によって自律的に選択することの繰り返しの現象と考えれば、誰でも創造的なアイデアを生み出せるようになると著者は語りかける。
「変異の九つのパターン」から固定観念を外す方法を学べば、これまでと違う可能性を持つアイデアを、無数に発想できるだろう。そしてたとえ失敗したとしても、「適応の四つの観点」に照らせば、失敗の本質的な理由を理解し、確かな観点を通して納得できるようになるはずだ。著者は、こうした創造的な思考法にたどりついたことで、「素直になり、自由になった」という。これは特に印象的な言葉だった。
この本にはだれもが進化思考を身につけられるように50個の進化ワークが登場する。実践しながら読める本なので、ぜひトライしてほしい。

本書の要点

・進化思考とは、生物の進化のように「変異×適応」という二つのプロセスを繰り返すことで、本来だれのなかにもある創造性を発揮し、変化を生き残るコンセプトを生み出す思考法だ。
・「変異」とは、生物にも発明にも共通する「どのように変化できるのか(HOW)」の型であり、偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法でもある。変量・擬態・欠失など九つのパターンが抽出されている。
・「適応」とは、人類の生命科学史のなかで確立された「なぜそうあるべきなのか(WHY)」の探索手法であり、適応を理解する生物学的な観点だ。空間の内部と外部、過去と未来に対応し、解剖・系統・生態・予測の四つの手法が挙げられている。



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