レビュー
スーパーで会計待ちの列に並んでいる間に、レジ横に陳列させた乾電池を思わずカゴに入れてしまう。インターネットショッピングで「〇時まで」「数量限定」といった言葉に惹かれて、気が付けば注文ボタンをクリックしている。
私たちの日々の生活は意思決定の連続だ。伝統的な経済学では人間は合理的にふるまうものだと見なされてきたが、人が日常でとる行動には、非合理的な行動も多分に含まれている。本書が解説する行動経済学は、伝統的な経済学では説明のつかなかった人間の行動に焦点を当てる。人の考え方のくせを知ることは、マーケティングに直結する。この理論を応用すれば、周囲の人に望ましい行動をとるように促すことも可能だ。人との接し方や、チームビルディングに悩む人にとっても、行動経済学の理論は役に立つ。
また、日常生活で自分が非合理的判断を下す可能性を自覚し、どうすれば合理的な意思決定ができるかを知ることは、自分のプライベートを充実されることにもつながるだろう。無駄な出費を抑えたり、目標達成のために自分を動かしたりするためのヒントも、本書から見つけることができる。カラーのイラストが豊富に掲載されているので、眺めているだけでも行動経済学の基本的な考え方を知ることができる。まさに「サクッとわかる」という名にふさわしい本書は、入門にうってつけの一冊だ。
本書の要点
・人間は常に合理的な判断をすると見なす伝統的な経済学では、人間の行動に矛盾が生じる。
・ヒューリスティックは深く考える必要のない場面で効力を発揮する便利な思考プロセスだが、偏った考え方(バイアス)によって常に適切な判断に結びつくとは限らない。
・人は損得を合理的に見分けることができない。得をしたときの喜びよりも損をしたときの悲しみの方が大きいため、損失を避けようとする心理が働きやすい。
・消費者が日常生活で触れるさまざまな場面で、行動経済学を活用したマーケティングが行われている。
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