レビュー
本書は、京セラの創業者で名誉会長の稲盛和夫氏による最新刊である。一代で1兆円企業を築き上げた功績に加え、KDDIの立ち上げと日本航空再生という偉業に裏打ちされた教訓の数々が、1日1項目ずつ読み切れる構成で366日分紹介されている。
企業経営やリーダーシップなどの経営哲学にとどまらず、夢や魂、人生といった遠大なテーマについて、深く、幅広く考察されている。稲盛氏がよく引き合いに出す中国古典のエピソードや、「ど真剣」「物心両面の幸福追求」といった考え方のほか、何十年も先の未来の世代を見据えた企業の姿を説くなど、普遍的な価値に基づいた考え方が随所に見受けられる。
稲盛氏は、若い頃から夢や目標に向け、将来像と具体的な展開、社会的な意義を考え抜いてきた。自身の考えを会社の幹部らに行き渡らせるため、「くたくたになるほど、相手に自分のエネルギーが送り込まれる」ように説明を尽くすという。本書は稲盛氏がそうした思いを込め、全身全霊で執筆した「エネルギー転移の書」とされる。
要約に際しては、経営哲学など著者が重ねて強調していた箇所を中心に再構成した。経営者をはじめとしたリーダーの方々はもちろん、幅広い層のビジネスパーソンにお読みいただきたい一冊だ。仕事に対する心構えや人生の意義など、生きるうえでのさまざまな悩みを解決するヒントがきっと見つかるだろう。
本書の要点
・事業の目的は、人間としても最も崇高な願望に基づくべきだ。現在のわれわれの行為が未来にもたらす結果を心にとめ、日々善きことを行いたい。
・経営者の人格が高まるにつれ、企業は成長、発展する。企業の発展には、経営者が人間としての器を絶えず向上させていく努力が求められる。
・感謝の心、素直な心を持とう。今ここにいることをありがたいと思えれば、心が豊かで充実している証だ。そして素直であればこそ、人は成長し、進歩する。
・意欲や情熱を持ち、常にすべてのことに「ど真剣」に向き合って生きる。その積み重ねが人間の価値となり、人生のドラマを実り多いものにする。
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