レビュー

大企業には、次世代の経営を担う人材を育成するための研修プログラムがある。経営層との対話の機会が用意され、企業の哲学や信念を引き継ぎ、さらに次の世代へとバトンパスしていく。

しかし現場で日々仕事をする社員にとって「経営」は経営層の仕事と感じるものだし、話を聞くだけではそれが一体何を指すのかわからないのも無理はない。組織変更、新たな人事制度といった断片的な改善を目にしても、その背後にある経営者の意図を汲み取ることは困難だ。
本書には「経営は人を通じて事をなすこと」とある。そして「人がつくり出すプロセス」こそ、経営の質を左右するという考えを軸に据える。そのプロセスに影響を与える、経営者の意図によってつくり出される環境や仕組みを「コンテクスト」と呼び、予算策定システムから行動規範まで、そのすべてを「コンテクスト・マネジメント」の対象とする。
周知の通り、どの企業でも経営者は多忙だ。その中で数人の役員がコンテクストをつくり、魂を吹き込み、運営しなくてはならない。だからこそ、ミドルマネジャーや現場リーダーが「コンテクスト・マネジメント」を学び、実践することは、大きな支えとなる。本書が出版され、広く届けられているのは「1人ではできないことを成し遂げるために組織がある」からだ。誰もが、経営者リーダーとなる志ある人々であるために。この講義録を開き、日本企業の経営を「そこそこ」から「卓越した経営」へと変えていこう。

本書の要点

・競争優位は「組織プロセス」から生まれる。

よい組織プロセスを形成すべく、経営陣の意図によって作り出される社内の環境や仕組みが「企業コンテクスト」だ。
・経営リーダーは「戦略」「経営管理」「組織行動」の3つのコンテクストを設計・構築・運営して経営の舵取りをする。
・「内部資本市場」「中枢神経」「インキュベーター」の3つの経営アジェンダの同時追求で生じる葛藤は不可避だ。マネジャーが新たな役割と任務を果たせるよう、経営者リーダーはかれらを支える「組織行動のコンテクスト」を率先垂範しなくてはならない。



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