レビュー

毎日何気なく使っている「言葉」。考えれば考えるほど、言葉というのは不思議なものだ。

同じ単語を使っていても、相手が考える意味と自分が考える意味は違うかもしれない。同じ文を見たときに、相手と自分では別の解釈をしているかもしれない。同じ「日本語」という言語を使っているはずなのに、毎日そこかしこで誤解やすれ違いが生じ、言葉の解釈をめぐって争いが起きることさえある。
言語学者であり作家でもある川添愛氏は、言語学的な立場からこう言う。言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持ちうる、と。しかし、多くの人は、自分の解釈が、唯一の正解だと思い込む。
他の解釈の可能性を指摘されたときに、「そんな解釈もあるのか」と思えれば争わなくてすむものを、「普通はそうは考えない」と自分の正しさを主張したくなってしまう。
本書には、言葉のすれ違いの事例が多数登場する。その度に自分の解釈が頭をよぎるが、「言語学的には」というフィルターを通して考えると、他の解釈があることも受け入れやすい。本書の言葉を借りれば、自分と相手の「頭の中の辞書」は違って当然なのだ。言葉の解釈で争うよりも、曖昧さが生まれやすい状況を知っておこうとしたほうが、効果的なコミュニケーションを取れるようになるはずだ。
曖昧さを通して考える言葉の世界は、不思議な魅力に溢れている。
複雑な世界を、限られた音や文字で表現しようとするのだから、曖昧さが生まれるのは当然なのかもしれない。そんなふうに考えていくと、曖昧さにロマンすら感じられるようになってしまう。

本書の要点

・言葉の解釈の違いから対立が起こる場面が少なくない。しかし、言語学の立場から眺めれば、言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持ちうる。言葉を多面的に見る視点を養い、言葉のすれ違いを察知し、対処できるようにしよう。
・言葉にどのようなイメージを持つかは、世代差や個人差がある。

自分と他人の「頭の中の辞書」は異なるということは意識しておきたい。
・言語の曖昧さを示す有名な例文に「頭が赤い魚を食べる猫」というものがある。これには5つの解釈が可能だ。



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