レビュー
時代を変えるほどの革新的なイノベーションの創造は、生まれながらにして才能に恵まれたほんの一握りの天才だけに可能なことであり、その他大勢の凡人には無縁なことだ。イノベーションや創造について、そのようなイメージを持つ人も多いはずだ。
進化思考とは、自然界における生物の進化のあり方に着想を得た、創造のための思考の方法である。生物の進化論を社会や人間の理解のために応用することは、ダーウィンの時代から存在する古典的な方法だ。それでもなお、「進化思考」が新しいのは、その発展的な応用にある。自然界の進化プロセスや選択の過程を創造にそのまま適用するのではなく、深い洞察と緻密な調査を合わせることで、創造のための手法へと昇華している。だからこそ、本書では自然界の進化について膨大な事例が紹介されている。生物進化へのイメージを掴むためにももちろん有用だが、デザイナーである著者が新しいデザインを生み出すためにどのような思考プロセスをたどっているのかを豊富な事例とともに知ることができるのは本書ならではである。
なによりも、自然界の進化と創造の過程に対する著者の純粋な探究心、溢れ出る喜び、そしてそれを描き出す瑞々しい感性や発想からも、学べることも多い。「創造」に関わるすべての人におすすめできる一冊だ。
本書の要点
・高い創造性を持つ天才とは、変異と選択を繰り返す思考を身につけている人のことだ。その方法を身につければ、創造性は誰もが再現できる習得可能な技術となる。
・自然界に存在する無数の優れたデザインは、進化のプロセスを経たことで生じたものである。「進化思考」は、創造を擬似的な進化として捉え、「偶然の変異」と「必然の選択」の往復を繰り返し、高い創造性の発揮を目指す。
・変異的思考と選択的思考を意識的に繰り返すことで、誰も到達しなかった価値あるアイデアを創造できる可能性が高まる。
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