レビュー

本書は、東大卒で現在無職の著者による哲学エッセイである。著者のしんめいP氏は、東大卒業後に一流企業に入るがうまくいかず、地方移住やお笑い芸人などに挑戦したものの挫折し、離婚して家族も失ったのち布団へと引きこもるという状態に至った。

そこで東洋哲学と出会い、虚無感を克服できたという。
登場人物はブッダ、老子、空海などの有名人ばかり。仏教の教えや中国思想は難しいとされる部分も多いが、現代語というよりほとんど口語の超訳によって、その思想がなぜ現代人にも受け入れられているのか、手にとるようにわかる。
その軽快な語り口で、「さとり」とはいったい何なのかという重要なテーマにも踏み込んでいく。偉人たちがどのように「さとり」に至ったのかについての逸話は、ほとんどがぶっとんだ内容である。いかに高名な人物でも、読後にはツッコミどころ満載の親しみやすい人物のように思われてくるから不思議だ。
「本当の自分とは何か」という問いはだれしも一度は考えたことがあるものだが、東洋哲学はこの問いに明確な「答え」を出している。そしてそれは、自分と他人の関係性や、社会とのかかわりのなかに生きづらさを抱えている人をラクにしてくれる。アドラー心理学みたいなものが好きというような方にも、普段は自己啓発書を読まないという方にもおすすめの一冊である。

本書の要点

・仏教の祖であるブッダが悟った内容は「無我」、つまり「自分とか、ない」という意味である。すべてが変わっていくこの世界で、変わらない「自分」をつくろうとする行いは苦しい。「自分がいる」という慢心をおさえると、最上の安楽が訪れる。


・仏教における「空」の教えは、「この世界はすべてフィクションなのだ」と解釈できる。世界のあらゆるものがなにものでもなくなり、すべてのものはつながっていく。
・「空」の境地にたどり着くための1つの答えが、「言葉をすてろ」という教義に基づく禅である。



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