レビュー
食べることなくして人は生きていけない。とはいえ、食に対する愛と情熱の度合いは、人によって大きなバラつきがあるように思う。
南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破――浜田氏の経歴の一節だ。浜田氏はこの豊富な経験から得た知見を1冊の本にぎゅっと詰め込んで、私たちにシェアしてくれている。
本書は“なぜ、「美食」か”という問いからはじまる。そしてその問いに答える中で、著者は「誰かが作る食にしか興味がありません」「それは僕自身、クリエイティビティが欠如しているからだと自己分析しています」と書いている。著者は、食べることを「優れたクリエイターが作るものを享受する」行為だと捉えているのだ。
その前提のもと、著者ならではの美食哲学や美食の評価軸から、美味しさに出会うための心得・店選び・食べ方、フランスやイタリア、スペインをはじめとする世界各国の料理の歴史と特徴、著者が尊敬するシェフたち、美食の未来予測、いい客になるためのコツ、世界の注目レストラン50まで、幅広いコンテンツが詰め込まれている。どれも世界一の美食家である著者にしか書けない、知的好奇心を刺激してくれるものばかりだ。
本書を読めば、普段何気なく向き合っている「食」の見え方や体験が大きく変わるだろう。人生をもっと楽しむために、ぜひ読んでおきたい一冊だ。
本書の要点
・食事には「①栄養摂取」「②うまい」「③美味しい」という3つの段階がある。①は生存としての行為、②は本能としての欲求、そして③は文化としての知的好奇心によるものだ。
・本書における「美食」とは、必ずしも贅沢なものでも、美しいものでもない。文化的に食べること、すなわち「うまい」だけではない「美味しい」を探求することが、著者にとっての「美食」である。
・フーディーである著者は、美食を評価するにあたって、その料理が「どれだけ考え抜かれているか」と「シェフが自分の考えをどこまで体現できているか」を重視する。
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