レビュー

成功者のストーリーは痛快だ。そこから導き出される教訓も学びになる。

しかし、真に豊かで応用性の高い知恵が得られるのは、失敗のほうかもしれない。
オックスフォード大学・コペンハーゲンIT大学の教授である著者の一人は、メガプロジェクトの成否に関するデータベースを築いてきた。この分野では唯一無二の存在だ。メガプロジェクトとは、予算が10億ドル以上の大規模プロジェクトを指す。莫大な資金が投じられたということは、さぞ綿密な計画がなされたのだろう、と想像するかもしれない。ところが、メガプロジェクトの実態は、あまりにもお粗末だという。
メガプロジェクトの失敗率は非常に高い。本書によれば、予算、工期、便益の3点ともクリアするプロジェクトは、わずか0.5%にすぎない。失敗するプロジェクトの共通点を導き出し、プロジェクトを成功に導くための要点を提示しようというのが本書の目的だ。プロジェクトの大小にかかわらず、判断を行うのが人間である以上、失敗の原因自体は似ている。子どもの夏休みの学習計画が頓挫するのも、鉄道工事の工期が超過に超過を重ねるのも、背後に潜む人間の心理は似たようなものだ。本書は、大小のプロジェクトに活かせる学びの宝庫であるはずだ。
特にプロジェクトマネジメントに関わる方におすすめしたい。

本書の要点

・予算、工期、便益の3点ともクリアするプロジェクトは、わずか0.5%で例外中の例外だ。平均的なプロジェクトの結果は惨憺たるものだ。
・失敗したプロジェクトの共通点は、「すばやく考え、ゆっくり動く」ことだ。一方、成功したプロジェクトはいずれも「ゆっくり考え、すばやく動く」ことを徹底している。
・「ゆっくり考え、すばやく動く」が実践されないのは、人の心理や権力などが影響している。この点を理解し、意識的に計画に時間を使うべきだ。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ