レビュー
社会の中で生きていくにあたっては、学校や家庭での生活を通して一定の常識を学ぶこととなる。またこれまでに確立された既存の法則やルールを知識として学ぶことは、自然科学・人文科学を問わず学問や技術の基礎でもある。
本書は、ベストセラー『具体と抽象』『「具体⇄抽象」トレーニング』の著者である細谷功氏が、人間が自然界や社会の仕組みを理解したり常識を打破してイノベーションを生み出したりする際の思考方法を、「フローとストック」と「具体と抽象」という観点を組み合わせて解き明かしたものだ。知識やルールはなぜ必要とされるのか、どのようなときに既成概念を打ち破るきっかけが見出されるのか――。ものの見方と思考の枠組みの変化を論じながら、本書はその法則を見つけようと試みる。
世の中の多くは既成概念から物事を考える「ストック型」の思考で成り立っている。その地点に立脚しつつ、新たなアイデアを生み出す「フロー型」へと思考を転換することが重要なのだ。本書はそう結論づける。イノベーションを生み出すために必要なのは、積み上げたものから自由になり、流れに身を任せる瞬間なのかもしれない。
本書の要点
・人間の知的活動においては、日々の「思考」というフローの積み重ねが、「知識」というストックとなって蓄積されていく。
・「考える」とは、「具体」と「抽象」を往復することである。
・世の中の具体的な個別の事象を、抽象度を上げて連続的に捉えることで、その変化のメカニズムからさまざまな事象を説明し、次に起きる出来事を予想できる。
・イノベーションを生むためには、「ストックとしての具体」に当てはまらない例外としての歪みを見つけ出し、常識や慣習を解きほぐして、「フローとしての具体」へと転換する思考が必要とされる。
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