レビュー

とてつもない感動を前にしたとき、人は言葉を失う。しかし、同時に、「この感動を誰かに伝えたい!」とも思う。

手に余る大きな大きな感情を、それでも無理矢理言葉にしようとした結果、私たちは「やばい」「最高」を連呼するだけの生き物になってしまう。推しのいる人間とはそういうものである。要約者も某ウマのスマホゲームをはじめ多ジャンルにさまざまな推しのいる身だが、本書のサブタイトル『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』に激しくうなずくばかりだ。著者はそんな私たちの気持ちを汲みながら、この「言葉にできない感動」を言語化する方法を丁寧に示してくれる。
著者が、「好き」を言語化するうえでもっとも大切だと主張するのが、「自分の言葉で語ること」だ。このSNS時代では、日々他人の言葉が大量に頭のなかに流れ込んでいる。私たちは簡単に他人の言葉に影響を受け、気づかぬ間に他人の言葉を自分の考えだと思い込んでしまう。著者によれば、こうした他人の言葉と距離を取るためにも、自分だけの「好き」という感情を、自分だけの言葉にする技術が不可欠なのだという。
本書で指南するのは「『推し』を語る」ための方法に留まらない。自分のなかにある気持ちに向き合い、他人の言葉を借りずにきちんと自分の言葉で言語化する技術だ。これは「『推し』を語りたい」人だけでなく、多くのビジネスパーソンにとっても有用な技術であろう。「言葉にできないけど伝えたい気持ち」を持ったことがあるすべての人に役立つ一冊だ。

本書の要点

・自分の好きなものについて語ることは、自分自身への理解を深めることだ。推しについて語ることは、自分の人生の素晴らしさについて語ることでもある。
・SNSなどで他人の感想を見ると、自分の感情や思考、もともと持っていた言葉を失ってしまう。他人の言語化に頼らず、自分だけの言葉をつくりだすという姿勢が大切だ。
・言語化とは細分化である。自分が推しのどこに対してどう感じたのかをできるだけ細かく具体的に言葉にすることで、オリジナルな感想が生まれる。読解力、観察力、語彙力はそれほど重要ではない。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ