レビュー
近年の日本では、人材投資が組織の競争力向上に欠かせない要素として注目され、人的資本経営の重要性が高まっている。その根幹を支えるのは他ならぬ人事パーソンだ。
本書では、立教大学で教鞭をとる田中聡氏と中原淳氏、そして『日本の人事部』編集部が著者となり、人事パーソンの学びとキャリアに関する独自の調査結果を提示したうえで、その実態に迫っていく。特に、人事パーソンのキャリアには3つのアップダウンがあると指摘し、「若手期(20~34歳)」「中堅期(35~44歳)」「ベテラン期(45歳以降)」のそれぞれのフェーズにおける危機の乗り越え方を提示しているパートは必読だ。
本書によると、これまで「裏方」と捉えられてきた人事は、これからの時代は「主役」として位置づけられるという。自らを「裏方」と考えてきた人事パーソンはもちろん、経営者や、組織の成長に関心のある人、人的資本経営の実践を目指す人、人事としてキャリアを築いていきたい人、人事の仕事に関心を抱いている人などに広く勧めたい一冊である。
本書の要点
・人と組織にまつわる課題が長期的に重要な経営課題となりつつある現代は、人事が黒子ではなく主役となる、いわば「人事パーソンの時代」だ。
・仕事の中で特に成長し、成果を出している「ハイパフォーマー人事」についての調査では、その他の人事パーソンに比べて「経験学習」「1on1」「フィードバックシーキング」の3つの学習行動を実行している割合が高いことがわかった。
・幸福感と活躍度の掛け合わせによる「キャリア充実度」に注目すると、人事パーソンのキャリアには3つのアップダウンが存在している。若手期・中堅期・ベテラン期、それぞれの時期に陥りやすい課題と対応策を知っておこう。
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