レビュー

本書は、学部生の期末レポートから研究者の学術論文に至るまで、幅広くアカデミックな文章作成に必要な技術を身につけるための実用的なガイドである。研究者にとって「論文が書ける」ということは、スタートラインに立つための基本的なスキルだ。

本書はそのスタートラインに最速で立つための道筋を示している。
本書を一読するだけでも、アカデミックな文章を書くための基本的な視点がみるみる養われていくのが感じられる。精読し、指示通りにトレーニングを重ねれば、確実にアカデミック・ライティングのスキルが向上するだろうと期待が持てる。しかし本書が指南するのは単なる文章術に留まらない。論文の書き方だけでなく、「なぜ論文を書くのか」という根本的な問いにも立ち返り、読者に深い洞察を促している。
著者の専門である人文学の研究は、ときに「何の役に立つのかわからない」と評されることがある。人文学の研究は「実用性」に結びつけにくく、他分野の研究者から評価されない場合も少なくない。研究者自身も「なぜこの道を進んでいるのか」と迷うことがあるだろう。論文をスムーズに書けるようになったとして、その先の研究者人生に、どのような意味があるのか。
本書は「論文を書く」という行為を超えて、自分の分野の研究の究極目的に向き合い、研究を通じて世界や人生とのつながりを見出すことの大切さを説いている。初学者やアカデミック・ライティングをさらに洗練させたい中・上級者にとっても、研究者としてのキャリア形成に新たな視点を提供してくれる一冊だ。

本書の要点

・論文とは、核となる主張であるアーギュメントを提示し、その正しさを論証する文章である。

したがって、論証を必要としない主張はアーギュメントにはなり得ない。
・論文には「引用」と「批判」が必要だ。論文のアカデミックな価値を示すには、先行研究を引用し、自分のアーギュメントがそれを更新するものであることを示さなければならない。
・論文はパラグラフ・ライティングによって書くべきだ。これは「従うべきルール」ではなく、執筆を助けてくれる「活用すべきツール」だと理解しよう。



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