レビュー

半導体業界の覇者として一気に名を馳せたエヌビディア。2024年には一時、時価総額世界一位に躍り出た。

エヌビディアのニュースを聞かない日はないほどだ。では、なぜエヌビディアは世界トップになれたのか。エヌビディアの強みとは? 半導体業界の未来はどのようなものなのか。こうした点に迫るのが本書だ。
国際技術ジャーナリストの著者は、40年間、半導体業界とその応用分野を精力的に取材し続けてきた。そして、エヌビディアの飛躍をやや興奮気味で見ていたという。同社はゲーム用のグラフィックスから始まり、そこで培ったGPUを数値演算専用のコンピューティングアクセラレータへと発展させ、さらにニューラルネットワークモデルを使ってAIを実現させた。今やエヌビディアの影響力は、データセンター、自動運転、ヘルスケアなど、幅広い産業に広がっている。同社が創業後AIにたどり着くまでの道のりから、半導体技術の今後の可能性までを、著者は丹念な取材のもとに描き出す。
印象深いのは、CEOジェンスン・フアン氏の価値観が同社の社風や戦略に大いに影響を与えている点である。彼は未来志向で、「10年単位でものを考える人物」だという。たしかに、世界は10年ごとに大きな変化を遂げている。
現在のAI技術は2012年のAlexNet を機に発展し、10年後の2022年には、生成AIのChatGPT が登場した。では、次の10年後は何が起きるのだろうか? 本書は読者の知的好奇心を大いにかきたててくれるはずだ。

本書の要点

・エヌビディアのフラットな企業風土に大きな影響を与えたのは、社員一丸となって行った不良品検査作業と、2016年のAIへの戦略転換である。エヌビディアの上司はプロジェクトだ。
・エヌビディアの強みは、AIと半導体という2つの成長技術を持ち、あらゆる産業にトータルソリューションを提供できることだ。
・エヌビディア創業のヒントになったのは、1990年代初めの日本で起きていた家庭用ゲーム機におけるハードウェア性能競争である。



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