レビュー

なぜ部下のやる気が低いのか。なぜ人事評価への不満が多いのか。

これらの悩みに頭を抱える管理職や経営者は多いはずだ。マネジメント方法の見直しや評価制度の改善などの打ち手は必要であるが、それと同時に、行動の背景にある人間の心理を理解することも重要である。心理学博士である著者は、ビジネスは心で動く人間同士がするものであり、心理学はビジネスのあらゆる局面に関わりがあると続ける。
本書は「モチベーション」「人事評価」「職場の人間関係」「リーダーシップ」「マーケティング」の5つのテーマを挙げ、職場でありがちな「なぜ」を題材に、50項目を解説している。心理学の観点からの考察に、要約者は人間が持つ「そもそも」の性質に強い魅力を感じた。例えば、モチベーションを向上させる項目では、「そもそも」人間は意味を求める存在であると説明され、評価制度に関する項目では「そもそも」大半の人が自分を平均以上だと考えている調査結果が紹介される。人間全体の傾向を捉えようとする考察は、新しい視点を与えてくれた。
経営者や管理職向けの内容が中心ではあるが、職場の人間関係に悩む従業員にとっても本書は役立つはずだ。心理学を学ぶことは、ビジネスパーソンとしての強みになる。経営学やマーケティングを勉強する人は多くても、心理学を学ぶ人は少ないからだ。「ビジネスは心で動く人間同士がするもの」という著者の教えを信じ、手にとってほしい一冊である。

本書の要点

・精神科医フランクルは、人間はそもそも意味を求める存在だと考えた。

ゆえに、仕事のモチベーションを上げるためには、仕事に社会的使命感を意味づけることが有効である。
・人間は自分が平均以上と考える傾向がある。だからこそ、人事評価には不満がつきない。
・人間には物事を都合良いように解釈する心理傾向がある。そのため、人の手柄を奪っても平気でいられる人がいる。
・期待する方向に相手が変わっていく「ピグマリオン効果」と呼ばれるものがある。従業員に頑張ってほしいならば、期待を示すことが大切だ。



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