レビュー
人はいくつになっても悩みから解放されない。若くても年齢を重ねても、どんな立場にあっても、悩みが尽きないのが悩ましい。
とはいえ、「お母さんがおもちゃを買ってくれない」と悩む大人がいないように、悩みの対象は成長するにつれ変わってくる。今は食事が喉を通らないほど悩んでいることも、10年後にはケロッと忘れて、別のことに頭を悩ませているはずだ。しかし、その最中はそんな未来のことに考えが及ばず、「生きるか死ぬか」というところまで思い詰めてしまうこともある。
本書は、医師で小説家の著者が、人生それぞれの年代における悩みにフォーカスし、精神保健学の知見と自身の経験からアドバイスを講じていく。通常なら、若い頃から徐々に年齢を上げていくところを、本書では老齢期、中高年、成人、青年期、思春期……と遡り、最後は乳幼児期で終わる。今の自分の年代から読みはじめてもいいし、最初からページを進めて「人生の逆回転」を体験するのもいい。いずれにせよ、長い時間軸で見ると、過去か今か未来かの違いだけで、どの悩みも「自分の悩み」であるはずだ。
要約では20代~60代に相当する中高年、成人(大人)、青年の3つの年代を取り上げた。若い世代には「中高年」といってもピンとこないかもしれないが、「この先、こういうことがあるかもしれない」と、転ばぬ先の杖としてほしい。人生100年時代を健やかに生きるためにも、読んでおきたい一冊だ。
本書の要点
・中高年は「人生の成熟期」であるのと同時に、「老い」を意識させられる時期でもある。人生の折り返し点に立ち、過去を悔やむこともある。
・25歳~45歳の「成人期前期」は、個人の人生が決定する重要な時期だ。中高年になって人生を後悔するか否かは、この時期の過ごし方にかかっている。
・高校卒業から25歳前後の青年期は、就職と結婚という人生の二大決断を迫られる時期である。この時期に生きる意味を探し、自らのアイデンティティを獲得しなければならない。
・悩みから逃れることはできないが、期待値を下げることで悩みを減らすことはできる。
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