レビュー
スーパーに買い物に行くと、何から何まで高くなっているような気がしてしまう。取引先からの連絡は価格を上げる内容のものが目立つ。
本書は、多くの人が抱いているであろうそうした実感に寄り添いながらも、多くの公開データを詳細に検討することで、「ほんとうは何が起きているのか」を明らかにする。
少子化と超高齢化が進みつづけている近年の日本では、他の先進国よりも早く、多くの業界、地域で慢性的な人手不足になりつつある。一方で、こうした人口減少経済では、医療・介護を中心に「人手を介したサービス」に対する需要が高まる。この需給のひっ迫に、時給でみた場合の賃金は確実に上昇しているが、働き方改革の影響や労働と余暇に対する考え方の変化に伴い、年間総労働時間は減少した。この状況でこれまでの経営をできる限り維持していくためには、生産性を向上していくしかない。そのひとつの解決策が、機械化・自動化の導入なのである。
人の手による細やかなケアや人間ならではの創発性に注力し、人手不足の状況を補っていける体制づくりが急務だ。安く大量の労働力を投入する時代は、とうの昔に終わっている。人が働くとはどういうことなのかについて、よりつぶさに考えていかなくてはならない局面だ。
本書が示す現実と未来は、どの状況にいる人にも関係してくる。自分がこれから歩む道をうらなうためにも、ぜひ知っておきたい。
本書の要点
・少子高齢化が進み人口減少経済に入った日本は、「人手を介したサービスへの需要」が高まる一方で、労働市場の需給がひっ迫し、深刻な人手不足に陥っている。
・日本経済が低迷しているのは労働生産性の問題ではなく、労働投入量(総労働時間数)の減少にある。
・人手不足が賃金上昇圧力を強め、地方の中小企業では労働条件改善の経営改革が求められる。
・エッセンシャルワーカーの分野は、「生産性が上昇しないまま膨張」した状態になっている。
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