レビュー

「時間に追われ、他人に気を配る余裕もない」「人間関係がギスギスして、なんとなく生きづらさを感じている」。本書はそんな状況にある方にお読みいただきたい一冊だ。


私たち人間が扱う情報量は指数関数的に増大している。意識的にデジタルデトックスの機会を設けていたとしても、情報の波に飲まれてしまいそうな感覚を抱く方も多いのではないだろうか。また、格差が拡大し、人生の指針を見つけにくい時代となりつつある。心の平穏から遠ざかってしまうのも無理はない。そうした状況に差し込む光となるのが本書だ。
著者は曹洞宗の住職であり、庭園デザイナーや大学教授の顔を持つ枡野俊明氏だ。禅の教えをもとに心に平穏を取り戻す方法を、優しい語り口で紹介した本が人気である。そんな枡野氏が今回取り上げたテーマが「ゆずる」である。情報に急き立てられる現代において、心穏やかに他者に「ゆずる」という行為の重要性をいま一度思い出させてくれる。
道元禅師は「放てば手に満てり」という言葉を残している。手放すと、空いたスペースに「いいもの」や「いいこと」が入ってくる。電車で席をゆずったら、笑顔が返ってきた。
同僚に仕事をゆずったら自分が苦労しているときに手を貸してもらえた、という具合だ。
忙しい毎日に追われているとき、本書を手にすれば、忘れかけていた「寛容な心」を取り戻せるかもしれない。

本書の要点

・「ゆずる」とは、器を大きく育てることであり、自分磨きのひとつだ。ゆずりあいの精神で共に器を大きくする関係をめざすとよい。
・自分のためばかりでなく、人のために積極的に取り組む姿勢がよい社会をつくる。
・仏教の「因縁」は、この世のすべてが巡り巡ってつながっていることを意味する。よい報いが得られるのは、今このときを懸命に生きる態度だ。
・打算的な善行ではなく、真に他者を思いやる精神で「陰徳を積む」ことが大事である。



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