レビュー

近年、EXという言葉をよく耳にするようになった。EXとはEmployee Experienceの頭文字をとった言葉で、従業員体験と訳される。

本書における定義は「従業員が、その企業で働くことによって得られる体験や経験」だ。
本書の著者のひとりである沢渡あまね氏は、「EXが注目される一方、指針となるような共通の枠組み、すなわちフレームワークがない」ことに「もどかしさと課題」を感じていたそうだ。そのような課題感をもとに、沢渡氏、石山恒貴氏、伊達洋駆氏が力を合わせて生み出したのが、本書で紹介される「EXジャーニーマップ」である。
EXジャーニーマップは、生活者、候補者、従業員、退職者の4つのライフステージに沿い、EXを13のプロセスに分類したもので、それぞれのプロセスに複数の「体験機会」が紐づいている。たとえば「オンボーディング」のプロセスには、入社時オリエンや配属時オリエン、メンタリングといった体験機会が紐づく。
沢渡氏も指摘しているように、EXを「人事とか経営の仕事でしょ?」と思っている人もいるかもしれない。だが本書を読み進めるうちに、それは完全な誤解だと気づくはずだ。EXは従業員一人ひとりの行動によって左右されるし、さらに言うと、たとえば新入社員のオンボーディングは、既存社員であるあなたのEXにも影響を及ぼす。
誰もがより快適に、より生産的に働ける組織をつくりたいすべての人に、本書を勧めたい。

本書の要点

・EX(従業員体験)は、日常接点からはじまり退職後リレーションに終わる13のプロセスに分類される。
・不十分なオンボーディングは新入社員の早期退職につながりかねない。新入社員が組織になじめるよう、仕事の知識を伝えるだけでなく、会社の文化や価値観を理解し、人間関係を築く場にする必要がある。


・日常の業務遂行の仕方の改善やアップデートを疎かにしていては、高いEXは形成されない。意思決定プロセスやコミュニケーションを常に見直そう。
・人生100年時代においては、誰しも休職する可能性がある。組織とそこで働く個が良い関係を維持し続けるためには、休職/復職の適切な設計が欠かせない。



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