レビュー

記者や取材ライターをしていると、仕事が多忙で優秀な人ほど「気遣い」できる人が多いと感じる。誰に対しても温かな挨拶をし、こちらの質問がたとえ拙くても、想像を及ばせて趣旨を的確にとらえたり、真摯に考えたりしてくれる。

そんな素敵な対応をされると、こちらもより良い記事を書こうと奮起するものだ。
著者が本書で強調するように、「気遣い」のできる人は周囲に良い影響を伝播する。しかもそれを気負わず自然体でやってのけるから、一層輝いて見える。
そんな「気遣いの達人」になるのは難しく思えるが、元CA(客室乗務員)で人材教育のプロである著者が書いた本書を読むと、少しの心がけや言動の工夫でそこに近づけることに気づく。要約本文でも述べるように、「気遣い」は相手への「思い」を起点とする。本書には好印象を抱かれる会話や所作のコツが多数出てくるが、それはあくまで「相手に寄り添う気持ち」を効果的に伝える手段であることに注意したい。気持ちが伴わなければ自然でなくなり、自他にストレスをかけてしまうのは、著者の経験談でも明らかにされている。
本書は2014年刊行の作品に加筆・修正し、文庫化したものだ。それからコミュニケーションの手段は格段に広がったが、「気遣い」の本質が「相手への寄り添い」である点は変わらない。オンラインのやり取りが増えたからこそ「気遣い」のある言動は対面で際立つだろうし、オンラインでも声や文章に乗せて届けられる。その具体的な方策が豊富に盛り込まれた本書は、時代を経ても古びない「気遣い」の古典と呼べそうだ。

本書の要点

・本当の「気遣い」は相手を想像することから始まる。

元CAの著者は新人時代、喪服姿の乗客にとっさに笑顔を消した先輩の姿から、挨拶は目的ではなく「気遣い」の手段であることを学んだ。
・「気遣い」は相手に安心や信頼を与える行動だ。「表情管理」や「お伺いの姿勢」など、少しの工夫で相手に良い印象を与えることができる。
・言いにくいことを言うときは、自分を主語にした「Iメッセージ」を使うといい。「本題」を「ねぎらい」や「励まし」で挟んで伝える手法も有効だ。



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