レビュー
雨の中、濡れずに歩く方法はないだろうか。傘を忘れた日、誰もが一度はこんなふうに考えたことがあるはずだ。
著者にかかれば、日常生活のすべては「物理学的思考法」の対象になってしまう。雨に濡れない方法の他にも、碁盤の目のような京都の街で陽にあたらずに歩ける時間帯、桃を平等に切り分ける方法など、身近な問題に物理学の知識を使って答えを出そうとしている。
そんな著者は物理学の啓蒙にも積極的だ。映画『GODZILLA 星を喰う者』への協力を通して、科学者が社会的に果たすべき責任についても考えるようになり、活動の舞台を演劇や音楽とのコラボレーションにも広げている。物理学を遠い存在に感じている人にこそ、本書を楽しんでもらいたい。クスッと笑えるエピソードを通じて、物理学の面白さを身近に感じることができる。「橋本先生だったらどんなふうに考えるかな」と想像してみるだけで、いつもの毎日の見え方がちょっとだけ変わってしまうはずだ。
本書の要点
・「学習物理学」は、著者が領域代表を務める新しい学問分野だ。
・雨の落下速度、歩く速度、体の傾け具合を計算し、雨粒の軌道を避けて歩くことができれば、理論上は雨に濡れずに歩くことができるはずだ。
・素粒子物理学は宇宙の謎を解き明かし、原爆の原理を生んだ分野でもある。その系譜の研究者として、物理学の啓蒙を行うことは、科学者としての社会的責任を果たすことにもなるだろう。
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