レビュー

「あんなに頑張ったのに、評価Bか」「上司が変わった途端、急に“使えない部下”扱いされるようになった」……。やりきれない思いが募り、「もう辞めちゃおうかな」と思う。

それでも次の日は平気な顔をして出社して、ため息をつきながらも淡々と仕事をこなす。
このとき、おそらく心は「傷ついている」。でも、それを口外するのは憚られるし、自分の無能をさらすようで恥ずかしい。職場にそれを言える雰囲気もない――。このような思いを抱えている人は相当数いるはずだが、職場での「傷つき」は「なかったこと」にされてしまう。なぜか?
本書はそんな、あるのに見えない「職場の傷つき」に着目し、組織開発の視点から紐解いていく意欲作だ。著者は『「能力」の生きづらさをほぐす』で注目される、気鋭のコンサルタント・勅使川原真衣さん。勅使川原さんは現代社会にばっこする「能力主義」や「自己責任」に一石を投じ、組織のあるべき姿を探っている。
著者によると、「職場の傷つき」がなかったことにされる裏には、能力主義が関わっているという。昨今は年功序列など従来型の組織モデルが崩れ、「主体性」「協調性」「リーダーシップ」といった個人の「能力」が評価基準となった。しかし、「能力」は職務や環境や人間関係によって、いとも簡単に変化する。本書では、「能力」評価に頼りすぎる危うさを指摘し、それに代わる解を導き出す。

もしあなたが、今の職場に得体の知れないモヤモヤを感じているなら、ぜひ本書を開いてほしい。その答えが見つかるかもしれない。

本書の要点

・職場において、大きな問題が起きる前には必ず「傷つき」がある。「職場の傷つき」はそこかしこに存在しているのに、なかったことにされている。
・職場での「傷つき」が「個人的なこと」にされがちな背景には、「能力主義」の存在がある。
・「職場の傷つき」を当たり前にしないためには、「人は揺れ動く存在である」「能力ではなく機能を持ち寄る」「組み合わせを考える」の3つの視点が必要だ。
・仕事の「成果」は、「誰と×何を×どのようにやるか」と定義できる。



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