レビュー
ゼロから事業を立ち上げ、短期間で会社を急成長させてIPOや売却をめざす。成功確率は低いが、うまくいけば億単位の資金を手にすることも夢ではない。
本書は「AIスタートアップ戦記」の名の通り、その道筋を鮮やかに描き出す小説だ。事業のビジネスモデルを考え、投資家にピッチを行って資金調達をし、プロダクトをつくる。ピボットを迫られることもあれば、信用失墜の危機に陥ることもある。
著者の安野貴博氏は、「テクノロジーを通じて、誰も取り残さない東京をつくる」と掲げて、2024年東京都知事選に出馬し、一躍時の人となった。安野氏の起業やAIエンジニアとしての経験が本書のリアリティを高めているのではないだろうか。
外からは順風満帆のように見えるスタートアップも、その航海の道程は波乱万丈なものだ。本書を読むと、スタートアップの内実が生々しく伝わってくると同時に、スタートアップの苦難と可能性について理解を深められる。なにより、悩みながらも前に進んでいく主人公・松岡まどかの姿に勇気づけられるだろう。「そうきたか」と思わされる急展開の連続に、引き込まれるにちがいない。
読めば、背中を押され新たな挑戦がしたくなる。
本書の要点
・松岡まどかは大手企業リクディードの内定取り消しに遭い、起業を決意した。ところが、1年以内に10億円の企業を作らなければ1億円の借金を背負うという、とんでもない契約を投資家と結んでしまう。
・松岡はAIによるヘッドハンティングサービスを考案し、ピッチを行い、資金調達をする。だが、この事業はうまくいかず、ピボットを余儀なくされる。
・AI面接官へのピボットで事業は軌道に乗っていくが、ランサムウェアの被害に遭うなど、松岡はさまざまな困難に見舞われることとなる。
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