レビュー

スマホやSNSなどへの依存によるデジタル疲れ、過剰な情報にさらされることによる脳の過労状態、いわゆる「脳腐れ」は、心身に悪影響を及ぼすという。そうしてくたびれた心身の休養に、またデジタルを使ってしまう。

誰にも心当たりがありそうだ。
著者は、デジタルと共存するために「休息」を設けていく、デジタルデトックスの活動を通じて、「今の私たちに足りないのは、余白ではないか」と考えるようになった。「ケイパビリティ(能力)」ではなく「キャパシティ(許容量)」が不足しているのだ。デジタルデトックスは、余白という名の「暇」を生み出す行為といえる。それは、自分の人生や社会に「ポジティブな変革を起こす」エネルギー、きっかけになるという。これが、「人生に大きな発見と自由をもたらす『旅人の余暇』」と「社会に温かさと冷静さをもたらす『賢者の余暇』」の獲得につながる。
本書は、「戦略的に(=目的を持って)、暇(=目的を持たない時間)を作ろう」としている。そして、暇な時間における「休息」では、心身の活動を抑える「パッシブ・レスト」だけではなく、趣味やライフワークなどによる気分転換を含む「アクティブ・レスト」もバランスよく取り入れる必要がある。VUCAの時代に、社会を変えていくほどのエネルギーを蓄えるためにも、そうして良質な暇を目指していかなくてはならない。
すべての忙しい現代人に、戦略的暇という良薬は最初は苦く、しかし抜群の効果を誇るに違いない。

本書の要点

・私たちがデジタル技術と共にありつづけるためには、そのデメリットにも目配りしておく必要がある。
・人間の注意力、集中力は「私たちの生活そのもの」である。

しかし、テック企業はそれを「擬制商品」として売買している。
・テクノロジーは「満ち足りた余暇社会」を目的として設計・導入されなくてはならない。そのファーストステップがデジタルデトックスだ。
・余暇の時間に、生身の人間として非効率を謳歌できることは、人生を彩り、愛おしくする。



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