レビュー

「禅」という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべるだろうか。この言葉は現代においてふたつのイメージをまとっていると思われる。

まずひとつは、伝統的な仏教における禅のイメージだ。山奥にこもり、ひたすら坐禅を組み、苦行とも思われる理不尽な修行の果てに悟りを開いていくようなステレオタイプがあるだろう。
もうひとつは、ビジネスにおいて取り沙汰される禅のイメージである。スティーブ・ジョブズが禅に大きな影響を受けていたことはもはや知らない者はいないほどに広まり、以降、世界中のビジネスリーダーが“ZEN”を支持しているようである。このふたつのイメージは、一見乖離して見える。ビジネスにおける禅の導入は、本来の禅とはかけ離れた通俗的なものなのだろうか?
本書を読む限り、そうではないと思われる。著者は臨済宗建仁寺派両足院の副住職という肩書きを持つ、現役の僧侶である。その立場から記された本書は、読者としてビジネスパーソンを主に想定しているのだが、内容の根幹は「問い」を大切にする、というシンプルなものだ。
考えてみれば、現代のビジネスシーンほど「問い」が大切な場もない。かつて悟りを求めて修行に邁進した禅僧たちも、自らの立場で「問い」を追い求めていたのだろう。ふたつに共通する「問いの技術」は、根源的には同じものなのだ。

本書の要点

・「自己肯定感」へのこだわりは狭い「自我」を固め、否定感を生む。

禅は答えより問いを重んじ、我をほどき柔らかな自己を育む思想であり、言葉への柔軟な態度が心の幅と自由を広げる。
・体験を経験に昇華する「EXPメソッド」は、多様な「我」を受け入れ「無我」へ至る実践法だ。これにより柔らかさを取り戻し、可能性を広げることができる。
・「問う」姿勢は自立と自由をもたらし、広い視野を開く。「問いの設定」を重視し、自らの「座右の問い」を持つことが自己探索と人生の充実につながる。



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