今季終了後、U-21欧州選手権のノックアウトステージとEURO2020が立て続けに開催される。両方に出場するオランダは若い才能を多数、擁しており、どの選手をどちらに出場させるべきか、という贅沢な悩みを抱えている。

各選手は現在、所属クラブで最後のアピールを続けている。

 5月31日からU-21(実質23歳以下)欧州選手権のノックアウトステージが、6月13日からEURO2020が開幕する。どのタレントをユーロに連れて行き、誰をU-21欧州選手権でプレーさせるか、これからオランダはいい意味で悩むことになる。

U-21世代はタレントの宝庫

 2019年5月、U-21オランダ代表がU-21メキシコ代表との練習試合で5-1の勝利を収め、コロナによってサッカー観戦がままならなくなるまで、私は頻繁に彼らのホームゲームを現地で観戦していた。

 なにせ、この世代は才能の宝庫なのだ。例えば、メキシコ戦の3トップは右からステングス(AZ)、マーレン(PSV)、クライファート(ローマ→ライプツィヒ)が並び、ガクポ(PSV)やノア・ラン(アヤックス→トゥエンテ→クルブ・ブルッヘ)というビッグタレントが途中から出場するという豪華メンバーだった。

 このU-21代表を追い始めた時、私は「世代別代表チームというのは、どんどん戦力を落としながらチーム力を上げていくもの」と考えていた。

メキシコ戦で先発したステングスとマーレン、さらにベンチスタートだった左SBのワインダル(AZ)は瞬く間にU-21オランダ代表を“卒業”し、A代表の常連メンバーになった。このようにコアメンバーをA代表に引き抜かれるのはU-21代表チームの定めである。

 しかし、今のU-21オランダ代表はアタッカー陣だけでもボアドゥ(AZ)、ディルロスン(ヘルタ)、ブロビー(アヤックス→来季ライプツィヒ)がメンバーに入り込み、マーレンやステングスとは違ったアクセントの前線を組むことができる。そして、予選リーグ10試合で46ゴール(オランダと同組2位のポルトガルは27ゴール)というとてつもない破壊力を見せたのだ(ただし、ブロビーは予選時にU-21オランダ代表におらず)。

EURO2020出場が期待される逸材も

 ステングス、マーレン、ワインダルに続き、A代表定着までもう一息なのが、キャップ数3のMFフラーフェンベルフだ。190cmの高さは大男ぞろいのオランダの中でもかなり目立つが、彼の良さはボール運びのスムーズさにある。

 懐の深いボールキープからフェイントを繰り出し、柔らかなボールタッチで相手を翻弄しながら局面を打開し、豪快なフリーランニングで敵陣深くに忍び込む。見ていてひと目で「あ、うまい!」と思わせる華が、彼にはある。いずれ、A代表の中盤でフレンキー・デ・ヨンク(バルセロナ)とコンビを組む可能性を秘めた逸材だ。

 ここに来て「U-21欧州選手権ではなくEURO2020のメンバーに入れるべき」という声が高まっているのがFWガクポだ。彼もまた187cmというなかなかのサイズの持ち主である。

 3月のU-21欧州選手権グループステージではピタ止めのトラップから単独で仕掛けたり、味方とのコンビネーションで狭いスペースを抜け出したり、スケールの大きなプレーでチャンスメークや得点に絡んだりしていた。

直近のPSVでの試合でもゴールを決めた。その際、評論家からは「今日のガクポは全体的に出来が良くなかったが、それでもゴールに絡む決定的なプレーができるのは立派なもの」という評価を受けていた。

U-21欧州選手権か、EURO2020か。オランダが抱える贅沢な悩み

ガクポに対しては「EURO2020のメンバーに入れるべき」という声が高まっている

 「A代表定着間近」と言われていたものの、最近評価を下げてしまったのがMFコープマイナース(AZ)である。クラブでもU-21代表でも主将を務めるリーダータイプのコープマイナースは中盤のコントローラーを主戦場にしながらCBもこなせるのが売りのレフティーである。しかし、3月のU-21欧州選手権グループステージではボールを前に運ぶスピードが遅く、「守」→「攻」のギアを入れることができなかった。

 U-21オランダ代表で注目のポジションは右SBだ。

レギュラー候補ナンバーワンはフローニンゲン時代に右サイドで堂安(ビーレフェルト)と黄金のコンビを組んだゼーファウク(ヘルタ)だろう。しかし、今季のオランダリーグは若手右SBの当たり年で、テゼ(PSV)、ヘールトラウダ(フェイエノールト)、ジュスティン・ティンバー、レンス(ともにアヤックス)、フロラヌス(ヘーレンフェーン)がレギュラー、ないしは準レギュラーとしてプレーしている。

 しかも、彼らの多くが所属クラブで「スピードのあるCB」としてプレーする機会を得ながらプレーの幅を広げている。中でもテゼはPSVでシュミット監督によってCBに固定されながらシーズンを過ごし、ファンや関係者を驚かせている。

 この夏、オランダはEURO2020に若手を送り込みながら、U-21欧州選手権での優勝を狙っている。準々決勝の相手は強豪フランスだ。


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