「自分を見失っておったところがあるのかもしれません」──。紆余曲折を経て今年度予算が成立した翌日(1日)、石破首相は自身の商品券配布問題について、そう振り返った。
4月に入って調味料や酒類・飲料を中心に約4000品目が値上がり。スーパーに行ってはタメ息しか出ない物価高に、庶民の暮らしは疲弊しきりだ。夏の参院選を前に焦る自民党は、松山政司参院幹事長が2日、石破と官邸で会談。食料品やガソリンを含め「キメ細かな対策」を直談判した。
松山氏は会談後、「私の意向をしっかりと受け止めてもらった」と満足げだったが、肝心の具体策は見えてこない。
石破首相は先月28日の参院予算委員会で、立憲民主党の川田龍平議員から食料品の消費税率の引き下げを迫られ、「物価高対策のひとつの対応として考えられないことではない」と答弁。諸外国の事例を念頭に、税率や期間、対象品目などについて「きちんと検討させてください」と実施に含みを持たせた。
ところが、この答弁から4日後、態度をガラリ。1日の会見で、「食料品を限定とした消費税の減税を打ち出していく考えがあるのか」との問いに「税率の引き下げは適当ではない」と言い放った。
あまりの変わり身の早さにア然とするが、石破首相の変節は今に始まったことではない。
総裁選で見直しをほのめかしていた健康保険証の廃止を予定通り断行。選択的夫婦別姓を巡る議論では推進派から慎重派に宗旨変えした。ヘイト製造機と化した杉田水脈前衆院議員に関し、「強烈な違和感は持っている」のに参院選比例代表で公認。高額療養費制度の見直しでは、全面凍結に至るまで迷走に迷走を重ねた。
「結局、政権基盤が弱いからでしょう。物価高対策をはじめ政策を実行に移していくうえで官僚とケンカはできないし、むしろ支えてもらわなければいけない。言動に問題が多い杉田氏を公認したのも、石破さんとは本来なら政治スタンスの相いれない一部の岩盤保守に配慮した結果です。霞が関や党内に気を使わざるを得ないとはいえ、内輪の論理に拘泥しているように見えます」(自民党関係者)
八方美人に徹する悲哀が漂うが、あくまでも石破首相が気にしているのは身内の評価。自分より国民の声を見失ってないか。
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日刊ゲンダイでの短期集中連載【石破茂 4代目クリスチャンの系譜】も必読だ。関連記事【もっと読む】では、石破首相の母親について触れている。