「アメリカを笑わせたい~お笑いメイド・イン・ジャパンの挑戦~」(NHK BS=3月23日)で、元ゾフィー・上田航平、ラブレターズ、吉住、Gパンパンダ・星野光樹、サク・ヤナガワの6人がコントユニット「Tokyo Sketchers」を結成し、昨年12月のシカゴ公演に挑戦する模様を追ったドキュメンタリーが放送された。


 事の発端は、テレビタレント的な振る舞いは苦手だが「ネタを作るのが好き」という上田が、日本での活動に限界を感じていたことだった。

そんなとき、アメリカで暮らすアニメーターの知人から「こっちではコメディー作ってるだけで飯食えてる人たくさんいる」と聞き、「もしかしたらイケるかも」と国外へと目を向け始める。


 2023年11月にゾフィーが解散し、間もなく渡米した上田。SNSを通じて現地の日本人コメディアンと接触を図る中で知り合ったのがスタンダップコメディアンのサクだ。シカゴを中心にキャリアを重ねたサクの働きかけで、老舗コメディー劇場「セカンド・シティ」をはじめとする3日間3公演の開催に至っている。


 昨年1月からトークライブを重ね、彼らはアメリカのお笑い文化、英語の習得状況、ネタの選定などさまざまな事柄について語り合い、ユニットメンバーや開催日までの計画を発表していった。そんな中、「キングオブコント」でラブレターズが優勝し、予期せず“日本のコント王者”がアメリカに挑戦する格好になったのが印象深い。


■「俺らがやる意味なくなっちゃう」


 番組を見ていてハッとさせられたのは、日本と同じネタで挑戦したい上田と、アメリカでキャリアを重ねてきたサクとの公演に向けた考え方のズレだ。


 上田は「(サクの意見を聞いて)全部やっちゃったら、まず俺らがやる意味なくなっちゃう」と口にする一方で、サクは「(僕は)スベれない。名前がかかってるんで」と語る。純粋にファニーなキャラクターや世界観で笑わせる日本、ニュース性のある素材を独自の視点で皮肉るネタが支持されるアメリカ。ふたりの対立は、この問題を内包しているように思えた。


 サクと上田たちの溝は埋まらぬまま公演当日を迎え、2日目には小道具や音声トラブルをきっかけに若干揉める様子も放送された。

星野が仲介に入り、その後に上田とサクが朝まで話し合った結果、最終公演でもっとも良い反応を得られたという。しかし、各劇場から出演オファーが来ることはなかった。


 日本でも地域や職場、学校などで身近な笑いは変化するため、特定の場所で笑わせるには事前に情報をリサーチしてネタを調整するのが定石だ。ただ、漫画やアニメのように日本人向けのネタがそのまま海外でウケる成功例もなくはない。骨が折れる作業だろうが、ぜひ上田にはその可能性を模索しコント師の道を切り開いてほしい。 


(お笑い研究家・鈴木旭)


  ◇  ◇  ◇


 お咎めはなかったが、復帰は急がない方が良さそうだ。関連記事【もっと読む】令和ロマン高比良くるま“早期復帰”しない方がいい…《スポンサー絡みの忖度?》でさらに炎上のリスクあり…では、書類送検を免れた高比良くるまについて伝えている。


編集部おすすめ