3年超も続く物価高騰対策をめぐり、消費税の減税がようやく現実味を帯びてきた。野党第1党の立憲民主党が「食料品の時限的ゼロ」に舵を切り、与野党の足並みがそろってきたからだ。
主要野党の中で唯一、消費減税に後ろ向きだった立憲が25日の臨時執行役員会で、1年間限定で食料品の消費税率を0%に引き下げ、中低所得者の消費税を実質的に還付する「給付付き税額控除」に移行する案を夏の参院選公約に盛り込むと決定した。経済情勢によって1年間の延長も可能とする。消費減税を主張する党内の2つのグループが勢いづくなど分裂含みで、財政規律派を自任する野田代表が寄り切られた格好だ。
野田氏は役員会後の会見で「民のかまどから煙が立ち行かなくなる、消えてしまう可能性もあり得る」などと庶民に寄りそう姿勢をアピールしていたが、後出しジャンケンの割にはしょっぱい。
日本維新の会は「食品ゼロ」を2年間、国民民主党は時限的な一律5%への引き下げを主張。参院選惨敗にビクビクする自民党の改選組も2年程度をメドに「食品ゼロ」を執行部に求め、連立を組む公明党も類似案を調整している。
野田氏は会見で「赤字国債に頼ることなく、地方財政にも未来世代にも負担を及ぼさないように財源を確保する。これも政調会長に指示した」とも言っていた。これがまた、どうにも油断ならないのだ。
「首相や財務相を歴任し、財務省にからめ捕られた野田代表はゴリゴリの財政規律派。周辺も似たような政治信条の持ち主ばかり。『食品ゼロ』への譲歩と引き換えに、他の品目については税率12%への引き上げを打ち出すのではないか。
8%の軽減税率が適用されている食料品への課税をゼロにした場合、国と地方の減収はザッと5兆円。一方、消費税1%分は約2兆円だから、2%の増税でおおよそ手当てができる。
野田氏は首相時代、「社会保障と税の一体改革」にこだわって自公と3党合意し、公約にない消費増税方針を決定。自民による政権奪還を許した。三つ子の魂百まで。目の前の暮らしよりも正論か。