「シンジ・オグマという議員の発言がこちらのSNSでバズっています」
NY在住ジャーナリストのシェリーめぐみ氏からそんな情報がもたらされたのは4月25日のこと。一体、何かと調べてみると、日本では産経新聞など一部で報じられたものの、ほとんど話題にならなかった野党議員の国会質問だった。
シンジ・オグマは立憲民主党の小熊慎司衆院議員(福島3区・当選5回)。注目されたのは4月16日の衆院外務委員会での岩屋外相への質問だ。トランプ関税に冷静かつ毅然とした対応を取るべきだとし、こう発言したのだ。
「アメリカの言っていることは無理難題だし、理論もめちゃくちゃ。何の整合性もない。不良少年のカツアゲに近い」
「カツアゲするやつにお金をあげたら、またカツアゲに来ます」
「とにかくまっとうじゃない相手に譲歩してはだめ」
質問は30分強あったが、衆院が配信する公式動画を切り抜き英訳をつけたもの、さらには生成AIを使って、小熊氏が流暢な英語で質問しているかのように見える動画まで作成され拡散されている。
「最初に見たのは1週間くらい前で、リベラルやプログレッシブ(進歩的)な論客が『日本にすごいことを言う人がいる!』と取り上げていました。Xやユーチューブ、ポッドキャストで取り上げられ、超人気のニュース・プラットフォーム『マイダス・タッチ』でも『日本の国会議員がトランプを完璧に打ち負かした!』というタイトルで紹介され、ユーチューブで120万回再生されています。アメリカの議員は同じことを思っていても、絶対に言えない。トランプに弱腰で打つ手がない中、同じように黙って言うことを聞くと思われていた日本の議員が、公の場でこれだけ強い批判をしたことに驚いたのでしょう」(シェリーめぐみ氏)
海外での大バズリを受けて、28日には日本の外国特派員協会(FCCJ)が小熊氏を招いて記者会見まで開いた。改めて小熊氏は、「トランプ関税は世界経済、米国経済に悪影響を及ぼしている」「トランプ大統領は常識を逸脱している。裸の王様だ」などと発言。
■世界に広まる従順な日本人像
「コメント欄を見ると、日本人はおとなしくてモノを言わない、米国と同盟関係だから遠慮して本音を言わない、というステレオタイプの評価があった。そういうイメージなんでしょうが、野党とはいえ国会議員という立場の人間が発言したから驚いた。実際、日本は国際社会でイエス、ノーを明確にしないので、米国追従に見られがちなのも分かります。ただ、国民までおとなしいわけじゃないんですけどね」
赤沢大臣の「MAGA帽写真」が全世界に発信されたことで、従順な日本人像がますます広がったのは間違いない。「不良のカツアゲ」にどう対峙すべきなのか。小熊は会見でこう言っていた。
「バイ(1対1)で交渉してもジグソーパズルは完成しない。ピースだけは整っても全体としては歪んでしまうからです。大筋はマルチ(多国間)の交渉でやって、他の国と連携してトランプ氏を多国間交渉に引きずり出さなきゃいけない。トランプ氏が交渉が得意ならマルチに参加して正々堂々と議論すべき。できないなら臆病者だ」
またSNSで拡散されそうな発言だが、交渉担当の赤沢大臣もトランプに「あなたは臆病者!」とブツけてみたらどうか。