【今週グサッときた名言珍言】


「15年前、(島田)紳助さんが引退してから代理司会ずーっとやっております」
(東野幸治/日本テレビ系「ダウンタウンDX」4月24日放送)


  ◇  ◇  ◇


 東野幸治はこの春、「行列のできる相談所」「東野・岡村の旅猿」(ともに日本テレビ系)、「ワイドナショー」(フジテレビ系)というMCを務めていた番組を一気に失った。そんな中、ダウンタウン・浜田雅功が休養に入り、「ダウンタウンDX」の代理司会の仕事が舞い込んだ。

そのオープニングで語った一言が今週の言葉だ。


「行列のできる相談所」は島田紳助から引き継いだ番組で、「ワイドナショー」も本来は松本人志がメインだった番組。だから、自分の番組だというよりも“賃貸物件”のような感覚だったという。だから、終了を告げられたときも「そらそやろ」と思った。そもそも「テレビタレントってそういう因果な宿命というか、そう思って入ってきてるし。時給の良いフリーターの気持ち」(テレビ朝日系「耳の穴かっぽじって聞け!」2025年3月31日)というのが、東野のタレントとしてのスタンスだ。


「テレビ番組って営業の方が一生懸命、革靴すり減らしてスポンサー企業に頭下げてお金いただいてるから、タレントごときがガタガタ言うたらあかんで」「ベースはそういうつもりやねん。自分が言われた持ち場の仕事を歯車の一つになって一生懸命やるっていうのを心がけてるのよ」(「耳の穴かっぽじって聞け!」25年1月1日)


 東野にとって、ダウンタウンと明石家さんま、島田紳助が「先生」だった。あるとき、紳助は教えてくれた。20代の芸人は、面白さ100%でいい。だが、30代になると、知識や哲学、聞いた人の身になることのようなものが、20%は必要になる。さらに40代になれば、それが「50:50」にならなければならない。

50代ともなれば、逆に「20:80」。面白さよりも言葉の重みが求められるのだ、と。


 ダウンタウンに呼ばれて参加した「ごっつええ感じ」(フジテレビ系)が終わったのは、ちょうど東野が30代に差し掛かったとき。この頃から東野はあえて、ダウンタウンとの仕事を断るようになった。「ダウンタウンさんという天才の下でやってたら二度と俺には冠番組なんてないんだろうな」と思い立ち、「あ、そうか。この世の中にダウンタウンさんがいない“設定”にしよう」(同前)と考えたのだ。


 それは、自身の知識や哲学を深めるための覚悟だったに違いない。そうしてどんなときにも任される信頼のあついMCとなったのだ。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


編集部おすすめ