【春ドラマ「女優進出組」の実力大分析】#1
ヒコロヒー
(TBS系「キャスター」で民放テレビ局の清掃員役)
◇ ◇ ◇
2025年春の連続ドラマでは、アイドル、お笑い芸人、アナウンサーら、さまざまなジャンルの女性が活躍している。異ジャンルからの参入で女優シーンに新しい風を吹き込む可能性を秘めた注目の存在を、12回にわたって取り上げ、女優としての可能性を分析する。
阿部寛主演の「キャスター」(TBS系日曜21時)には、人気お笑いピン芸人のヒコロヒーが民放テレビ局の清掃員役でレギュラー出演している。
「キャスター」は視聴率が低迷する民放テレビ局の報道番組のキャスターに就任した主人公を中心とする報道ドラマ。
第4話までのところヒコロヒーの役に大きな動きはない。しかし、ネット上では既に黒幕候補?と予想する声も上がっている。「結局は怪しくなかった」というミスリード要員の可能性も含め、そこにいるだけでミステリアスに見せることができるのが彼女の持ち味だ。
1989年10月15日生まれ、愛媛県出身。近畿大学芸術学科在学中(のちに中退)には文化会落語講談研究会に所属。大学祭でひとりコントを披露しているところを松竹芸能のスタッフにスカウトされた。
21年から日向坂46の斉藤京子(24年卒業)とのダブル冠番組「キョコロヒー」(テレビ朝日系)のMCを務め、2人の自由なトークが人気を集める。
ドラマ出演も多く、23年の「わたしのお嫁くん」(フジテレビ系)では波瑠の親友を演じた。
ピン芸人も含めてコントの担い手は演技力を買われてドラマに起用されることがあるが、芸人としてのイメージが強すぎると役に見えなくなりがちだ。
ヒコロヒーの場合は、クールな「やさぐれキャラ」のクセの強さとは対照的に、変顔で笑いを取るタイプでもなく、意外と見た目のイメージは正統派に近く、余計な色が付いていないので幅広い役がハマるのだろう。
母性を感じさせるのか、お笑い芸人をモデルとした人物の母親を演じることも多い。ZIP!朝ドラマ「泳げ!ニシキゴイ」(日本テレビ系)で錦鯉・渡辺隆の母、「だが、情熱はある」(同)では山里亮太の母親を演じた。
近い将来、NHK朝ドラでヒコロヒーがヒロインの母親を演じている姿を想像するのは、そう難しいことではない。彼女なら年齢の枠を超えて、かつらをかぶればヒロインの祖母、制服姿になれば妹も演じることができそうだ。ヒコロヒーの汎用性は、凄い。
(高倉文紀/女優・男優評論家)