【春ドラマ「女優進出組」の実力大分析】#2
堀越麗禾
(日曜劇場「キャスター」主人公・進藤壮一の娘役)
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今春の日曜劇場「キャスター」(TBS系・日曜21時)に、阿部寛が演じる主人公の娘役で出演しているのは、歌舞伎役者・市川団十郎白猿の長女で舞踊家としても活躍する、現在13歳の堀越麗禾。
主人公が妻と離婚したことにより、堀越麗禾が演じる娘の横尾すみれは母と暮らしているが、父親との間には確執が深い。
5月4日にオンエアされた第4話では、すみれが通う中学校で盗撮騒ぎが起きて父娘が対峙することになる。彼女は父に強い言葉を投げかけながらも、心の中では揺れていて、マジシャンがカードを胸元にそっと隠し持っているように、やさしさを内に秘めている様子を繊細に好演した。
2011年7月25日生まれ、東京都出身。8歳のときに日本舞踊市川流の名跡・市川ぼたんを襲名(4代目)。現在は舞踊家としては市川ぼたん名義、そのほかは本名の堀越麗禾で活動している。
昨年7月には伊藤園「1日分の野菜」のCMで弟の市川新之助と共演して話題となった。
連ドラ初出演は2021年放送の「二月の勝者」(日本テレビ系)。2024年夏の日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」(TBS系)には入院患者の孫役でゲスト出演した。
今回は注目度の高い日曜劇場で、しかも阿部寛の娘役という重要なポジションに抜擢された堀越麗禾は、日本舞踊で培われた、しなやかな存在感と目線の細かい動きを見せていて印象的だ。
女優の中には子どもの頃から日舞をやっていた人も多く、主演級では田畑智子、仲里依紗、土屋太鳳らが挙げられる(演技に力強さを感じさせることが共通点か)。
女優にとっての日舞のメリットとしては、時代劇での着物姿の美しさが連想しやすいが、それ以外に現代劇でも手の指先からつま先まで意識して演じることや視線の使い方のうまさがアドバンテージとして確実に大きい。
老若男女の視聴者が子役時代から見てきた芦田愛菜を「親戚のおじさん・おばさん」の気持ちで見守ってしまうのと同じように、堀越麗禾の成長を、凛とした存在感に両親から受け継いだ要素を感じつつ、やさしく見守っている人が多い気がする。
ふとしたときに見せる母の面影から、そういえば、彼女のお母さんの仕事場も、「キャスター」の舞台と同じニュース番組のスタジオだったなと、記憶を心の中でなぞりながら……。
(高倉文紀/女優・男優評論家)