【春ドラマ「女優進出組」の実力大分析】#11


 星乃夢奈(YouTuber・元仮面ライダーシリーズヒロイン)
  「いつか、ヒーロー」(ABC・テレビ朝日系)
  シングルマザー君原いぶき役


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 今春のドラマ「いつか、ヒーロー」(ABC・テレビ朝日系/日曜22時15分)で主人公の児童養護施設時代の教え子、君原いぶき役を演じているのは、YouTuberとして人気を集めて「デジタル世代のアイコン」と呼ばれた星乃夢奈。初夏を思わせる爽やかさを秘めた、注目の次世代女優だ。


 2004年11月7日生まれ、北海道出身。小学校6年生のときにYouTube公式チャンネル「ゆなちゃんねる」を開設して人気を集め(現在の登録者数は約68万人)、2019年から2023年まで雑誌「Popteen」の専属モデルを務めた。2022年に「仮面ライダーギーツ」(テレ朝系)でヒロイン役を演じ、2023年に歌手としても配信デビュー。


 2025年1月には北川景子をはじめ多くの主演級女優が所属している大手芸能事務所・スターダストプロモーションに移籍した。今後はさらに女優業を強化しそうだ。


 今期は茅島みずきが主演する「霧尾ファンクラブ」(中京テレビ・日本テレビ系/水曜深夜0時24分)にも出演中。こちらのドラマでは、同じように10代から支持されてインフルエンサーとして人気を集めた莉子と共演している。10代のカリスマと呼ばれながら、そのまま10代限定の人気で終わってしまう人も多い中で、星乃夢奈と莉子は着実に女優として成長している数少ない例だ。


 ふたりに共通するのは、クールな役や影のある役が似合うことだ。


 YouTuber出身女優の成功例が少ないのは、元気を与える動画を配信しないと閲覧数が伸びないために普段は明るく自己アピールしているが、演技では暗い役も演じないといけないので、求められる表現力の種類が違うからだろう。この点は、バラエティーでブレークした女優も陥りやすい。


 星乃夢奈が「いつか、ヒーロー」で演じているのは、寂しがり屋の一面があり、娘への愛情と憎悪に揺れるシングルマザーという設定で、おそらく20歳の彼女には想像するのが難しい役柄だと思うが、しっかりと彼女らしく表現している。


 星乃がメインで活躍した回のオンエア後には、公式インスタグラムで、悩んで主演の桐谷健太に相談しながら演じたことをかなりの長文で投稿。デジタル時代の人気者の意外なアナログっぽさと、まじめな人柄を垣間見た。これからは、YouTuberとしての星乃夢奈を知らない、女優として初めて彼女を知って好きになる人が増えるに違いない。


(高倉文紀/女優・男優評論家)


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