【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 ドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」(NHK)が27日に最終回を迎えた。主人公のさとこは一生付き合わなければならない病気になって生活が一変。

キャリアを諦め、週4日のパートで働くも収入は激減。家賃5万円の団地に引っ越しそこで薬膳を知り、団地の人たちとの交流で健やかな心身を取り戻していくほんわかドラマだ。


 ここで描かれるのは丁寧な暮らし。さとこが旬の野菜などで作る薬膳を取り入れた料理はどれもおいしそうだ。予期せぬことだらけの人生だが、食べて寝て待てばなんとかなると思わせてくれた。


 配役も素晴らしく、主人公の麦巻さとこを演じた桜井ユキも、お隣の大家さんちに居候する司役の宮沢氷魚もいいが、なんといっても加賀まりこ(81)演じる90歳の大家、鈴さんが秀逸。個性的なおかっぱ頭でおしゃれで好奇心旺盛。おせっかいなところがあるが、それにさとこは救われる。


 世間では鈴さんを加賀が演じているのに気づかなかったという人もいたらしく、ネットで話題にもなった。確かに「和製ブリジット・バルドー」「元祖小悪魔系」とも言われていた加賀が、そんな老け役を演じるわけがないと思っていた人もいるのではないか。そもそも誰もが吉永小百合でいられるわけではなく、主役をやり続けられるわけではないのだ。



「おむすび」の宮崎美子に「あんぱん」の浅田美代子

 このドラマには宮崎美子(66)も出ている。

宮崎は朝ドラ「おむすび」でヒロインの祖母を演じた。木陰でジーンズを脱いでいた「ピカピカに光って」の宮崎がおばあちゃんかと仰天したが、可愛いおばあちゃんを演じ切り、ドラマの中で癒やしの存在となっていた。


 ちなみに、現在の朝ドラ「あんぱん」でヒロインの祖母を演じるのは浅田美代子(69)。「赤い風船よ~」と歌っていた美代ちゃんもおばあさんかと思ったが、こちらも可愛いおばあちゃんになりきっている。宮崎も浅田も丸顔で年齢よりも若く見えるが、そういう人がおばあちゃんをやることで愛されるおばあちゃん像が出来上がる。


 昭和の時代、おばあさん役と言えば、演技の達者な女優の専売特許で、北林谷栄などは30代の頃からずっとおばあさん役を担っていた。浅田と仲良しの樹木希林も「寺内貫太郎一家」で沢田研二のポスターの前で「ジュリ~」と身悶えするおばあちゃんを演じた。


 そういえば、「とと姉ちゃん」でおばあちゃんを演じた大地真央が皺のまったくない陶器のような美しいお肌で登場したのには驚いたが、おばあさんは皺がなければいけないというのはこちらの勝手な思い込みに過ぎない。「美魔女」という言葉もあるように。松坂慶子も田中裕子も風吹ジュンも竹下景子もかつてのヒロインがすでにおばあさん役を解禁している。令和はおばあさん役が百花繚乱!


(桧山珠美/コラムニスト)


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