演出と分かっていても、NHK連続テレビ小説「あんぱん」のヒロイン・のぶの強烈な愛国キャラに辟易する視聴者が出始めているようだ。


 今作は「アンパンマン」の原作者・やなせたかしとその妻・小松暢さんをモデルにし、のぶと崇が幼馴染という設定に変更されるなどの史実とは異なるドラマオリジナル作品だ。


 今田美桜(28)がヒロインののぶ役を演じているが、女子師範学校に入学し、愛国心に目覚めて以降、特に他者へ自身の価値観を押し付ける描写が目立っている。


 自身に好意を寄せる柳井崇(北村匠海)から赤いバッグをプレゼントされた際には、「こんな贅沢なものに使うお金があったら、献金すべき」と突き返し、愛する豪(細田佳央太)の戦死を告げられ悲しみに暮れる妹・蘭子(河合優実)には、「命を懸けて戦った豪を立派だと言ってあげなさい」と言うなど、歴代朝ドラの中でも珍しく“愛国の鑑”に振り切ったヒロインである。


 そんなのぶに対し、視聴者からは《のぶの周囲への押し付けが酷いよね。ここまで共感できない主人公は初めて》《どんどん主人公嫌いになるー!のぶ腹立つー!主人公以外はみんな好きなのにー!》という反応が示され始めている。


■豪の戦死だけじゃない人気キャラの退場


「ひときわ愛国心が強いヒロインを描くのは、そこからのぶがどのように変わり、成長していくのかという布石として描かれている側面もあるでしょう。あの時代ではのぶのような人は実際に多かったと考えられますし、のぶの人物造形はむしろリアルと評価する声も上がってはいます。ですが、検索エンジンで『あんぱん のぶ』と入力すると、サジェスト機能で『嫌い』『苦手』という言葉が並ぶなど、時代背景としては理解できていても、どうしてものぶに共感できないという視聴者が一定数いるようです」(ドラマ制作関係者)


 さらに第10週では、とうとう崇も戦争に出征すると予告されており、ストーリーが大きく動き始める中で、のぶの愛国心も少しずつ変化を見せていくことが予想されているが……。


「特にここ数週で、豪の戦死や、崇の叔父である寛の死、戦争の辛い経験を吐露し、朝田家から姿を消したヤムおじちゃんなど、人気キャラクターが続々と離脱していることもあり、『あんぱんを視聴するのが辛い』という声も上がり始めています。視聴率の大幅な下落はありませんが、のぶの行きすぎた愛国心を省みるシーンなどがこれから出てくれば、視聴者の見方も変わり、好印象に逆転する可能性もあるでしょう」(同)


 また史実とは異なる崇とのぶの幼馴染設定にヤキモキしている視聴者もいるようだ。


「暢さんが戦前、お見合いで6歳年上の小松総一郎さんと結婚していたことが、昨年、高知新聞社の記事で判明しています。なので、のぶと次郎さんの結婚は史実通りではありますが、崇と幼馴染として育ち、互いを大切に想っている描写がありながら、唐突に次郎との結婚を決めたようにもドラマでは見えました。崇とのぶの恋を応援していた視聴者にとっては、がっかりした展開になっているようです。

また史実通りであれば、戦後に暢さんはやなせさんと再婚しており、今後の展開が読めるいわばネタバレ状態。それが興醒めする要素となっている側面も否めません」(同)


 史実とフィクションがうまく絡み合った良作という評価もある。今後の展開次第で、のぶが視聴者の心を取り戻すこともできそうだ。


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「あんぱん」の放送で、やなせたかしさんをめぐる遺産にも注目が集まっている。関連記事【もっと読む】やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目…では、アンパンマン作者の金銭感覚について伝えている。


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