【芸能界クロスロード】
民放の屋台骨を支えるCM。視聴者にとってはCMに画面が変わるたびに「肝心な時に」とボヤキたくもなるがCMも含めて番組だ。
手元にリモコンのある時代。番組は面白ければチャンネルを替える人はそういない。CMまたぎなど考えずシンプルに作るほうが番組の好感度も上がると思うが……。
実際、朝の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」は前半のニュースを深掘りするコーナーではCMをほとんど流さない。CMで中断されることなく一気に見ることができる。天気とストレッチが終わった後に集中的にCMを流す。視聴者にやさしい番組作りも高視聴率を支える要因であろう。
時には邪魔モノ扱いされるCMだが、なくなると困るのもCM。情報社会には欠かせないものだ。
顕著な例がお酒だ。特に多種多彩になったビールのCMも激化する一方。昔は三船敏郎や高倉健といった大物俳優を起用した時代もあった。藤原紀香や武田久美子が水着でビールのキャンペーンガールを務め、大きなポスターが店に張られていたこともあった。近年は女優をCMに起用するのがほとんど。女優を起用して成功したのがサントリーの“金麦”の檀れいと記憶する。
家で食事の支度をしながら夫の帰りを待つ妻の設定で「金麦と待っているから」というCMだった。宝塚出身の美人女優のCMは評判を呼び、ビールと共に檀も広く認知された。以後、ビールのCMに歌手、俳優、タレントも起用するのが一般的になった。
キリンは石田ゆり子、満島ひかり、天海祐希に今田美桜。アサヒは長澤まさみ、芳根京子、新垣結衣。橋本環奈も参入した。サッポロは堀田真由、二階堂ふみ。サントリーは広瀬すず、石原さとみを起用してきた。若い人を意識してか、家でも外でも友達とワイワイ飲む設定が主流になったように見える。
人気女優がおいしそうにビールを飲めば「ビール飲みたい」とそそる。
「昨年、キリンの“晴れ風”はビール名の面白さと缶のデザインもあったが、天海と目黒蓮らを起用したことで売り上げを伸ばした。各社も女優の起用に力を入れるようになった」(広告関係者)
化粧品に次ぎビールのCMも今や女優のステータスの時代だが、「女優としての実績と人気。爽やかな笑顔と好感度がより求められるのがビールのCM」(同前)というのが起用するポイントという。
間もなく暑い夏を迎えビール商戦。最終的には好みの味で選ぶのがビールだが、女優がおいしそうに飲んでいるから、ビールを飲む際の常套句「とりあえず」飲んでみようと思うきっかけをつくるのがCM。この夏、誰のビールを選ぶか? ビール界でも女優たちの熱い戦いが始まる。
(二田一比古/ジャーナリスト)