「暑さ指数計測器を持たせた担当スタッフを配置して、大きな日よけタープを張った休憩エリアをつくったり、冷凍・冷蔵庫や大型冷風機を持ち込んだりと、もうロケは大変です」とドラマのプロデューサーは話す。


 6月1日から職場の熱中症対策が義務化されたからだ。

「暑さ指数28以上、または気温31度以上の場所で、続けて1時間以上、または1日計4時間以上」の作業が予想されるときは、熱中症を予防したり、直ちに対処できるように準備しなければならなくなった。テレビの制作現場も対象というわけなのだ。


「趣味の園芸 やさいの時間」(NHK・Eテレ)のような野外収録も多いタレントの杉浦太陽は、「気温が31度を超えたら、出演者もスタッフも全員が1時間休憩して、何もしないんです。ADさんが次の準備に動くのもなしです」と語っている。来年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」は、7、8月はロケはやらないことにした。たしかに、時代劇の衣装を着けて、40度を超える炎天下の撮影は危険すぎる。


「バラエティーも外で長時間収録するような企画はなしです。ただ、旅や散歩ものはそうもいかない。出演者はしゃべったりしながら歩くだけですが、カメラさんや音声さんはその周りを動き回って収録しますから、熱中症になりやすいんです。この夏は早朝ロケが増えるでしょうね」(キー局ディレクター)


 対策が難しいのがスポーツ中継である。中継アナや解説者は放送ブースにいるが、高校野球のアルプススタンド担当のアナやカメラマンらは試合終了まで日陰もない。ゴルフのラウンドリポーターも厳しいだろう。

空調を効かせたスタジオ収録でも、強いライトを浴び続ければ熱中症になる。


「エキストラであっても、1人でも熱中症が出たら、救急車を呼んだりして、収録は即中止です。対策をとっていないと罰則もありますしね。最近は野外イベントや撮影現場に医療スタッフや車両を派遣する会社があって、依頼するテレビ局やCM制作会社が増えてます。待機してもらって、ちょっとでも体調が悪かったらすぐ診てもらう。でも、7、8月は予約でいっぱいでした」(前出のプロデューサー)


 昼の情報番組の定番だが、熊谷市役所前からの「日本一暑い街」中継なんかは、もうやめたらどうか。


(コラムニスト・海原かみな)


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