【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】
ROLLYさん
(ミュージシャン・音楽プロデューサー/61歳)
今週、網膜剥離の手術をしたロッカーのROLLYさん。60代になり、死ぬまでにやりたいことは、断捨離と生前葬だという。
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大ヒットを飛ばしたいとか、世界的ミュージシャンになりたいという大きな目標はないんです。デビュー35年でその瞬間、その瞬間でやりたかったロックオペラやミュージカルの主演も実現し、夢をかなえてきましたから。
実はこの先は断捨離をやりたい。まずはギターです。好きになってから集めたギターが100本以上あるので1本だけ残して処分する。というのも、どのギターを使っても音はそれぞれのギターからではなく、自分の指から発散されていることが年を取れば取るほどわかってきましたから。
結局はどのギターを弾いても、演奏したいプレーや出したい音はギターじゃなくて、はじく指から出ているんだと。だから1本だけあればいいんです。
普段、使うギターはだいたい同じで、手にしないギターが大量にある。僕が死んだらこのギターたちはどうなるのか不安で(笑)。少し前から「このギターは君にあげます」「これはアナタに」と親しい人に伝え始めているんですけど、行き先のないギターがまだまだ多すぎる。
ギターだけでなく、物をすべて処分して、身軽になりたい。それが一番心が安らぐ気がするんです。服も多いけど、普段着る服は3パターンしかないんですよ。自分のシルエットと完璧に合ったジーンズが3本しかないから。シャツは季節ごとに1枚ずつ決まっていますし。そうは見えないかもしれないけど、僕は朝起きて「今日はどの服を着ようか」と悩むのがすごくイヤで。だから服も処分したい。
家の屋上で家庭菜園に凝っていた時期に腐葉土を大量に買ってしまい、土とプランターが今もいっぱいある。「僕が死んだら、処分が大変だろうな」と思うから、これも処分しないと。
そして究極はギター1本とトランク1つだけの男になりたい。
亡きがらを見られたくないから「生前葬」が希望
他にやりたいことは、これも死に関連しますけど、「生前葬」ですね。62年生きてきてお世話になった方に集まっていただき、一人一人に感謝を伝えたいと。
理想は「あれ? ROLLYはいつの間にかいなくなったね」と言われる死に方です。どこに葬られているのかも誰も知らない。そんな最期が美しいと思う。だから、生前葬をして、実際に死んだ後にはお別れの会はナシにしたい。お別れの会で亡きがらの僕を見られたくないんです。それはかつてROLLYであった体だけど、もうROLLYではないから。
それより「いつの間にかいなくなった」と思われ、それぞれ最後に会った僕を記憶に残して魅力的な僕で終わりたい。
でも、その日まではやれることを頑張ってやらないとね。身軽になれたら、トランク1つとギター1本だけで寅さんみたいに日本中を回る。
ロックンロールの神、チャック・ベリーは世界ツアーをする時に自分だけが行き、バンドは現地のミュージシャンが事前に練習してくれていたんですよ。
僕もその考えを進めていて、沖縄でライブをする時は、Galaというライブレストランで演奏しているメンバーが一緒にやってくれる。佐賀や福岡ではNeo Fantasticというグループが事前に練習しておいてくれる。こうやって地方で演奏してくれる人が増えれば全国でチャック・ベリー方式でライブができる。
ひとりきりでは全国のショッピングモールでやっていますよ。小さい子どもからおじいさん、おばあさんの前でトークしながら演奏。レパートリーは果てしなく持っているので、目の前にいるおじいさんの顔色をうかがい、「この曲、お好きじゃないですか」「知ってるんじゃないですか」とアドリブで弾く。もうほとんど昔の流し(笑)。流しもギター1本で回るわけですから、僕もロックの流しとして全国回っていますよ。
外国の人からは「YouTube見てます」と言われます。海外の大きな会場でのライブは難しいけど、自分ひとりだけ行き、レストランでやるなら可能ですものね。
そして僕がどこかで最期を迎えた時には、「ROLLY、アルゼンチンで行方不明になったらしい」とか言われたいな。
(聞き手=松野大介)
▽旧名ローリー寺西(てらにし)。1963年9月、大阪府出身。82年からミュージシャン活動。「すかんち」のボーカル兼ギターとして人気に。音楽プロデューサーやタレント・俳優としても活躍。8月12日「渋谷うたの日コンサート2025」(19時開演、SHIBUYA PLEASURE PLEASURE)。出演は大槻ケンヂ、宮田和弥。詳細はROLLY公式HPで。