【テレビ 見るべきものは!! 碓井広義】
連続ドラマは「初回」が勝負だ。登場人物はどんなキャラクターなのか。
独身主義を貫いてきた弁護士の原田幸太郎(阿部)が電撃結婚する。相手は入院先の病院で偶然出会った美術教師の鈴木ネルラ(松たか子)だ。彼女は日本最大の缶詰メーカーの創業家に生まれたお嬢さま。亡き母が愛読書の宮沢賢治「銀河鉄道の夜」に出てくるカンパネルラから名づけた。
美人だがあまり笑わない。感情を表に出さないので何を考えているのか分からない。父親(段田安則)や叔父(岡部たかし)も同席の食卓で突然、「レンコンが好き。幸太郎さんはレンコンより好き」などと言い出す。
普通なら「オイオイ」だが、松がさらりと口にすると不思議なリアリティーが生まれるのだ。
初回の終盤、ネルラが抱える過去の殺人容疑が急浮上。一気に「マリッジ・サスペンス」へと転じる趣向は、さすが練達の脚本家・大石静だ。
(碓井広義/メディア文化評論家)