情報開示といえば「黒塗り」が付き物だ。公文書の一部を黒く塗り、都合の悪い部分を隠す。

文書を丸ごとべったり黒く塗る「のり弁」もよく見る。一体どういう基準でしているのか? その“お寒い”内情が、森友事件を巡る3回目の公文書開示で浮き彫りになった。


 例えば「報告書(訟務関係)」と題された文書。森友学園への国有地の売却額について、地元・大阪府豊中市の木村真市議会議員が情報開示を求めた裁判について記している。ところが法廷での原告と国側、それに裁判所のやりとりがすべて黒塗りで、まさに「のり弁」状態だ。でもこれは公開の法廷で行われた弁論で、傍聴人も取材記者もすべて内容を聞いている。その内容をなぜ黒塗りにする必要があるのか?


 この裁判では、土地取引の責任者だった財務省近畿財務局の池田靖氏が、売買金額を不開示にした理由について裁判所に陳述書を提出している。その2週間ほど前から近畿財務局と財務本省、それに裁判を担当する大阪法務局との間で頻繁にメールがやりとりされている。陳述書について事細かく修正が図られたようで、本省の中村稔理財局総務課長にも報告が行われている。だが肝心なところはすべて黒塗りで、詳細はわからない。


 写真は、左が裁判所に提出された陳述書そのもの。右は提出直前の最終形とみられる。

どちらもほぼ同じ内容と思われるが、右は本文が全面黒塗りの「のり弁」、左は本文がすべて開示されている。ところが「のり弁」で唯一明らかにされている池田氏の名前の部分だけ、左では黒塗りになっている。このちぐはぐさは何だろう? 省内で意思統一ができていないとしか思えない。木村市議自身もこの文書を見て「雑な作業ですね」と語った。


■事実確認せず公文書に記載


 木村市議が起こしたこの裁判をきっかけに森友事件が世に知られ、安倍政権を揺るがす政治問題へと発展した。財務省にとってはまさに“天敵”だろう。開示文書では至る所で「木村真」と呼び捨てにしている。そして木村市議を「共産党」と記しているのだが、実際は無所属で共産党ではない。近畿財務局の美並義人局長(当時)が「(木村市議の)共産党内での影響力はどの程度なんだろう」と発言したことも記されている。市議会の事務局に聞けばすぐわかる程度の事実確認もせず公文書に記載し、それをもとに財務局のトップが発言する。こんなずさんな組織が日本の財政を動かしていることにぞっとさせられる。


 それがわかるのも情報が開示されたから。

だからこそ全面開示が原則だ。役所が勝手な判断で黒塗りすることは許されない。


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