「24時間で終わらせる」──。ウクライナ戦争について、こう大見え切っていたトランプ米大統領だが、一向に停戦の兆しは見えない。

ロシアのプーチン大統領との“蜜月”を演出したかと思えば、今度は対ウクライナ支援に力を入れ始めた。


 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は1日、トランプ大統領がロシア領内のエネルギー施設への長距離攻撃を支援するため、ウクライナへの情報提供を承認したと報じた。トランプ政権は目下、ウクライナに射程1600キロの巡航ミサイル「トマホーク」を欧州経由で供与することを検討中だ。


 ウクライナからロシアの首都モスクワも狙えるトマホークの間接的供与に加え、対ロシア攻撃支援の情報提供への協力も惜しまないとなれば、米ロ間の緊張が高まること必至。トマホークならロシア国境から離れた製油所やパイプラインも攻撃可能で、ロシアの資金源を断つこともできる。


■停戦に向けた進展なし


 8月の米ロ首脳会談についてトランプ大統領は「非常に生産的だった」と成果を強調したが、停戦に向けた進展はなし。その後、プーチン大統領は戦闘機やドローンでNATO加盟国の領空を侵犯する挑発行為を続けた。もちろんウクライナに対する攻撃の手も緩めていない。


 ウクライナに妥協を迫り、プーチン大統領との融和ムードを演出していたトランプ大統領も業を煮やしたのか、ここへきてウクライナ支援強化に方針を百八十度転換した。かつてはバイデン政権によるウクライナ支援を猛烈に批判していたにもかかわらず、だ。


 一体、どういう風の吹き回しなのか。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。


「ドイツの憲法改正に伴い、NATOの軍備増強が図られ始めました。トランプ氏としては、対ロ封じ込めはNATOに任せて高みの見物ができる。また、ロシアの戦争継続能力も長くは続かない、今ならプーチン大統領を交渉のテーブルにつけやすいと見込んで、改めてウクライナ側にコミットしているのでしょう。戦争を終わらせれば、ノーベル平和賞も現実味を帯びてきますからね」


 トランプ流の揺さぶり効果はいかに。


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 ウクライナに平和は訪れるのか。【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。


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