なにか復讐でもしているかのように、クマが次々と人を襲っている。それも人々が普通に暮らす山里や観光地、郊外市街地などで被害が目立つ。


 これに戦々恐々なのが、そうしたところでロケが多いテレビの旅番組の出演者やスタッフたちだ。


「事前にクマの出没情報をチェックし、現場でも警戒していますが、ロケ中にクマの目撃情報が入って中止にしたことはあります。情報ワイド班が観光地を取材していて、気が付いたらロケ車両のすぐ脇にいたなんてことがあったようです」(ロケ技術会社ディレクター)


 クマの生態に詳しい専門家が、「あれはちょっと危なすぎる」と心配する番組が何本かある。まず「ポツンと一軒家」(朝日放送テレビ朝日系)。まさにクマが生息する山間の一軒家を訪ねていくのだから、これまで襲われなかったのが不思議なくらいだ。いや、ふもとの集落から6キロ入った岩手県の一軒家では、家の周囲にクマよけを設置し、住人は「最近クマをよく見るようになった」と話していた。捜索隊が行ったときは、たまたま出てこなかっただけなのだろう。


「帰れマンデー見っけ隊!!」(テレ朝系)もかなりやばい。路線バスを乗り継ぎながら、飲食店を探して峠道を長時間歩き、時には日暮れになることもある。クマがいちばん活発に動く時間帯だ。タレントの石原良純は「温泉場の近くで、10メートル先にクマがいて、(巨体の)サンドウィッチマンの後ろに隠れりゃ助かると思った」と話していたが、おそらく「帰れマンデー」の収録だったのだろう。


 お笑いタレントの狩野英孝もロケ中にクマに遭遇しているし、電動バイクで各地を巡る「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(テレビ東京系)の出川も、「最近、行くのが怖いのよ。

だって、クマがこんだけいたら、山の方とか走ってたら……」と語っている。


「遠くへ行きたい」(読売テレビ・日本テレビ系)や「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレ東系)も、いつクマに出くわすかわからないし、「ヒロシのぼっちキャンプ」(BS-TBS)などはクマを呼び寄せているようなものじゃないのか。


 これからの時季、クマは冬眠に備えて食べまくる。人を襲うことも多くなるだろう。しばらくは、クマが生息していない九州の旅番組が増えそうだ。


(コラムニスト・海原かみな)


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