2月の衆院選でYouTube広告を大量投下した高市早苗首相(自民党総裁)の政党広告が、約1億6000万回再生され注目を集めたが、その陰でネット広告を巡る問題が浮上している。公職選挙法は、選挙期間中に候補者本人による有料広告のネット配信を禁止。

ところが今回、候補者本人の顔写真と氏名を大きく使った有料の動画広告が、選挙期間中に選挙区内で流されていたことが分かった。


 日刊ゲンダイの調べで問題が発覚したのは、自民党の宮崎政久衆院議員(沖縄2区)の陣営。選挙期間中に有料のYouTube広告を配信していた疑いがある。


■「未来の沖縄を高市総理と共に」とナレーションが


 宮崎陣営は少なくとも3種類の動画を配信した。1本は、冒頭に「未来は自らの手で切り拓くもの」と語る高市出演の政党動画にカットインするタイプ。途中で「5期14年の実績」「自民党沖縄2区支部 支部長 宮﨑政久」の文言と、高市、宮崎氏の顔写真が掲載された画像に切り替わるものだ。「未来の沖縄を高市総理と共に」「今こそ沖縄の皆さんの力が必要です」と男性の声によるナレーションも流されている。


 2本目は、防衛副大臣である宮崎氏が、人気者の小泉進次郎防衛相の隣に立つ様子を収めている。3本目は、宮崎本人が「うーん……」とうなりながら、沖縄の城塞遺構「グスク」の城壁を押すしぐさが映され「グスクは動かせなくても、国は動かせる」のナレーションが流される動画。いずれも、本人の名前と顔写真が大きく掲載され、選挙区内で配信された。


 配信期間は、衆院選公示2日前の1月25日から投開票日前日の2月7日までの期間のみ。今回の選挙のためだけに用意されたことが強くうかがえる。

広告出稿の費用を出したスポンサーは宮崎氏の妻名義だった。


 同様の問題は、新潟4区から出馬した自民・鷲尾英一郎衆院議員の陣営でも発覚。日刊ゲンダイは今月11日付号で「選挙期間中に違法な有料広告配信」と疑惑を報じた。



宮崎陣営は、選挙活動とは無関係と主張

 宮崎陣営が配信した動画も公選法が禁じる違法な有料広告ではないのか。宮崎事務所は日刊ゲンダイの取材に「(動画は)政党支部の広告」で、「登録は便宜的に親族のクレジットカードでしておりますが、最終的な支払いは政党支部」と答えた。あくまで政治活動の一環であり、選挙活動とは無関係と主張した。


 しかし、公選法を所管する総務省のガイドラインによれば、選挙期間中に許容されるのは、政党サイトへ誘導する小さなバナー広告。候補者の顔と名前を大きく表示した動画を選挙期間中にのみ流すことは、形式・期間の両面から違法な選挙運動と判断される可能性がある。


 公選法に詳しい元東京地検特捜検事の郷原信郎弁護士はこう指摘する。


「総務省見解が許容しているのは、有権者が自らクリックして初めて内容にたどり着く小さなバナー形式だけだ。顔や名前を動画で直接見せる形式は全く別物だ。宮崎陣営の広告は顔・名前・スローガンを、クリックせずとも一方的に大きく見せている。

ガイドラインを逸脱し、公選法違反の疑いがある。また、普段から継続して広告出稿していたなら政治活動という名目も成り立ち得るが、選挙期間中のみの配信では言い逃れもできない。これが違反にならないなら、このスキームを使えばやりたい放題になる。そのうえ、政党支部を持たない無所属候補には使えない特権になってしまう」


 宮崎氏は2024年衆院選で対立候補に敗れ比例復活。小選挙区で当選した今回も大激戦だった。僅差の選挙戦で、禁じられた手法で広告を打ったのか。


 有料広告を出すには資金力が必要。カネによって選挙の公平性がゆがめられるとすれば、民主主義の根幹が問われる事態だ。


(桜井杏里/ジャーナリスト)


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 自民・鷲尾英一郎衆院議員の「違法ネット広告」疑惑については、関連記事【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。


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