【私が生きるクスリ】


 片岡鶴太郎さん
 (俳優・タレント・画家/71歳)


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 片岡鶴太郎さんのヨガを取り入れた徹底した節制生活はよく知られている。バラエティーに出ずっぱりで不摂生もしていた時代からの大転換は何が理由だったのか。

その効用なども伺った。


 睡眠は5時間。一日は夜中の11時に始まります。ベッドの中でマッサージに1時間かけます。指を一本一本、手の甲、手のひらを丁寧に。手には内臓とリンクしている末梢神経の反射区といわれるツボが集まっているので、マッサージすることで血行を整え、循環をよくする効果があります。お湯の塩分濃度は血液と同じくらい。食事は1日1回、時間をかけて食べます。


 最初は瞑想をやりたいと思っていて、ヨガのことは考えていなかったんです。ところが、ある方と出会って、瞑想をやるならと紹介していただいたのがヨガマスターです。


 その方に瞑想はヨガの最終的なものだと言われました。ヨガのいろいろなポーズはすべて内臓とリンクし、内臓をケアするものだから、食事から変え、肉体も整える。

そして最終的に精神世界、瞑想に入っていく。ヨガはその全体。やるならヨガを始めませんかと言われた。それが14年前。あと3年で還暦という57歳から始めました。


 ちょうど哲学とか生き方について礎になるような重たいものがないかと思っていた時にヨガに行き着いたわけです。ヨガは古代インド哲学に基づいている。実際に接してその深さや人類の英知に触れた気がして震えるほど感動しました。宇宙の原理であり、自然崇拝。ひと言では言えないほど深いものです。よくヨガのポーズをやっている姿を見かけますが、大切なのは肉体的なことよりも精神的なことです。


 ヨガの奥義の一端をお話しすると一つは非暴力。

肉体、精神、言葉の暴力は一切ダメ。それから嘘はいけない、真実を語れ、です。不盗、物を盗んでもいけない……。ヨガで教えられるのがこういう生き方の理念、理性的に生きるということです。僕はまずこれらに驚かされました。


■年を取って頑固、孤独になり心が病んでいる人にお勧めです


 それまでの僕は酒も飲んでいたし、直情的でしたからね(笑)。今はコンプライアンスの問題があるけど、当時は付き人に「何やってんだ」なんて怒鳴っていた。ヨガを知った14年前からこのままではいけないと猛省しました。ヨガは8000年も前の昔から、そういうことはいけないと唱えていたんです。


 年を取ってからはヨガの教えに耳を傾けてほしいですね。年を重ねてからこそ理性的になれということ。老人になって自分の我を通したり、新しいことを拒否して頑固になると孤独になる。

人間関係もうまくいかなくて心が病んでいく。ところが、ヨガで体を鍛え、瞑想して精神を整えると他人に対する怒り、憎しみがなくなります。


 年を取ると運動もしなくなりますよね。食事も偏る。そのことで悪循環に陥り、寝たきり、介護状態になる。でも、そうなってもお世話してくれる人に感謝できない人がいる。ヨガをやっていたらそうはならない。年を取った人にこそヨガを勧めたいですね。


 昨年は大河ドラマ「べらぼう」に出演、それから映画。舞台は年1、2作に出ています。



アガサ・クリスティの最初の戯曲「ブラック・コーヒー」で名探偵ポアロ役を

 舞台は舞台にしかできないことがあるのがいいですね。プロデューサーがいて演出家、美術、共演のみなさんと一緒に手作りで公演を作る。

ステージは生だから、映画のワンカットの長回しのようなもの。舞台はその緊張感の中で作り上げていく。映画、ドラマ以上にエネルギー、瞬発力、集中力が必要。それからNGができない。舞台、ライブの緊張感はやはり格別です。


 そして長いセリフを覚えるのはボケ防止にもなる。そういう意味で年をとっても楽しいです。


 今度、僕がやるのはテレビでもお馴染み、日本のファンも多い、名探偵エルキュール・ポアロです。原作はアガサ・クリスティ。アガサが書いた最初の戯曲でポアロが出てくる唯一の推理劇「ブラック・コーヒー」という作品です(写真)。


 ポアロシリーズは何十本もあって、ポアロ役で有名なのはデビッド・スーシェです。僕は大好きなスーシェの演技をファンの一人として見てきた。

これまで金田一耕助などの探偵も演じてきたけど、いつかはポアロをやってみたいと思っていたら、こうして舞台で演じることができることになり、とてもうれしいです。


 仕事が入るとそれらに集中しますが、終わったらアトリエに入って絵を描きます。朝、起きた時には何を描くかは決めていません。モチーフは季節を感じて描きたいなと思ったもの。日々変わります。年を重ねると季節を愛でる気持ちが深くなりますね。 (聞き手=峯田淳)


●取材前日、当日の朝の生活スケジュール


午後6時:帰宅して就寝。
11時:起床。手、顔、上半身のマッサージを丁寧に。薄い塩分濃度のお湯を飲む。鼻うがい、歯磨き。
午前1時:ヨガ。


5時:シャワー。
5時30分:食事(ポンカン、デコポン、金柑子ミカン、甘夏の柑橘系の4種類を各1個。リンゴ1個。大豆、ひよこ豆、黒豆を塩ゆでして甘酒で和えたもの)。それから和食(玄米と味噌汁、ナスの味噌炒め、ぬか漬け、梅干し)。食後はナッツ、ドライフルーツ、そして白湯。


●舞台「ブラック・コーヒー」(4月8~12日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、同月18~26日、東京・ステラボール)。脚本:アガサ・クリスティ、演出:野坂実、ダブル主演:片岡鶴太郎&鈴木拡樹、新木宏典ほか


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