【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#26
アルバム『ハード・デイズ・ナイト』(1964年7月10日発売)⑤
◇ ◇ ◇
■『恋する二人』
アルバム『ハード・デイズ・ナイト』の2曲目。
今回は英文法のお話。
歌い出しの歌詞は「よう知っとくべきやった。アンタみたいな娘に会うたらメロメロになるちゅうこと」。
原題が長いので邦題が付いているのはいい。原題と邦題、意味にちょっと距離があるけれど。
終始キュートでポップに進行する曲。『ハード・デイズ・ナイト』ほどのアイデアはないが、安心して聴ける曲である。【オリジナル記事で試聴する】
ジョージによるギターソロ(試聴リンク再生時間「1:28」から)を注意して聴いてほしい。キラキラッとした独特な音質になっているはずだ。
これは普通の6弦ギターではなく12弦ギターを使っているから。
あと超小ネタだが、映画のこの曲のシーン(2回目)で、ジョージがギターを弾きながら、ひざから下の脚を、キュッキュッと動かすのがめちゃくちゃ可愛い。
そんな可愛いジョージに惚れたのではないか。映画のこの曲のシーン(1回目)にエキストラで出演したパティ・ボイドという、こちらも可愛い女性が、のちにジョージと結婚する。
■『恋におちたら』
アルバム3曲目は、また仮定法のタイトルで邦題付き。原題「イフ・アイ・フェル」は仮定法過去で、邦題は歌詞に沿っている。アルバム『ラバー・ソウル』収録『恋をするなら』と並ぶ「ビートルズ2大仮定法過去タイトル」。
しかしアルバムの2曲目と3曲目の順番が「恋する二人」→「恋におちたら」って意味的に逆だろうと思うが、それはともかく。
この曲はもうジョンとポールのハーモニーに尽きる。今のJポップの機械的な「3度ハモリ」(3度はドとミの音幅)ではなく、ジョンとポールがある程度の距離感を持って、またあるときはユニゾンにもなって「くんずほぐれつ」ハモるさまは、まさに芸術的で変態的。
という芸術変態ぶりの無理がたたったのか、試聴リンク再生時間「1:44」の「♪ウォズ・イン・ヴェイン」という歌詞のところでポールが息切れしているのがおかしい。
ぜひ、この曲のジョンのボーカルパートをコピーしてほしいのだ。「もしこの曲の魅力を感じたいなら」(仮定法過去)。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」「大人のブルーハーツ」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた最新刊「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)が絶賛発売中。最新刊「日本ポップス史 1966-2023: あの音楽家の何がすごかったのか」が発売。ラジオDJとしても活躍。

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