2026年は、日中関係、そして東アジアの安全保障環境において極めて重要な「踊り場」となることが予想される。

その他の写真:ベトナムに近い中国の地方都市(2025年12月撮影)

 中国では新たな「第15次五カ年計画(2026-2030年)」が始動し、習近平指導部が経済構造の抜本的な転換と軍の掌握に一段と心血を注ぐ時期にあたる。
しかし、その足元を凝視すれば、経済の変調と軍内部の軋轢という2つの大きな歪みが露呈しており、日本はこの「傷を負った巨龍」との向き合い方を再定義せざるを得ない。

 まず、日中関係の最前線である安全保障に目を向ければ、習氏による軍統制の不安定さが浮き彫りになっている。人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の動向を分析すると、かつての「実力派」が排除され、習氏に近い「友人」たちが登用されたものの、その新任者らも相次いで失脚するという異常事態が起きている。定員7人のうち、現在は4人しか機能していないという「片肺飛行」の状態は、軍内部の掌握が完全ではないことを示唆している。

 例年行われてきた上将(将軍)への昇進式が見送られ、代わりに行われたのが軍旗のデザイン変更といった儀礼的な行事であった事実は、軍内の不満や混乱を象徴していると言えよう。「2027年危機説」を前に、2026年の中国軍は大規模な軍事侵攻に踏み切るための体制整備が追いついていない可能性が高い。しかし、体制の不安定さは往々にして外への強硬姿勢へと転化される。台湾本島への侵攻リスクが相対的に低いとしても、尖閣諸島や台湾周辺の小規模な離島における挑発行為のリスクはむしろ高まっている。

 「経済安全保障」の観点からも、尖閣諸島を巡る「日本有事」への備えを一段と強化することが、2026年の最優先課題となる。経済面に目を転じれば、中国は不動産バブルの崩壊という未曾有の困難に直面している。主要70都市の新築マンション価格の下落や、不動産開発投資の2桁マイナスという数字は、かつて国内総生産(GDP)の約3割を占めた不動産セクターがもはや成長のエンジンではなくなったことを示し、大きな負債の山だ。

 習指導部は不動産を「切り捨てる」という苦肉の策に出る一方で、すべての産業に人工知能(AI)を導入する「AIプラス行動」に命運を懸けている。
ドローンや自動運転、宇宙開発といった先端分野で米国を凌駕しようとするその野心は、日本企業にとっても強力なライバルであると同時に、サプライチェーンの再構築を迫る要因となる。一方で、若年層の失業率は「超氷河期」と呼ぶべき深刻な水準に達しており、社会不安の種となっている。政府が家電製品や電気自動車(EV)の買い替えを補助金で促す「一旧換新(古いものを新しく換える)」政策を強引に推し進めているが、これは将来の需要を先食いする一時しのぎの側面が否認できない。「構造的な停滞」の中で、中国経済がV字回復を果たすのは容易ではなく、2026年の展望も8割から9割方は悲観的な見方に覆われている。

 このような情勢下で、日本が重視すべきは、対話の継続と抑止力の強化という「静かなる均衡」の維持である。経済の低迷と軍の混乱は、中国を対外的に慎重にさせる要因にもなるが、同時に予測不能な暴発を招く危うさも秘めている。日本は、中国国内の複雑な権力闘争や社会経済の歪みを的確に分析し、過度な楽観を排した冷静な対中外交を展開しなければならない。2026年は、中国が「五カ年計画」を通じてどのような国造りを目指すのかを見極めると同時に、日本の防衛力の抜本的強化の進捗を中国側に認識させ、不測の事態を防ぐための「防波堤」を築く年となるだろう。歴史の転換点において、日中両国が衝突を回避しつつ、いかにして新たな安定を模索できるか。その答えは、経済、技術、そして何より軍事的リアリズムに基づいた日本の戦略的な意志に懸かっている。
【編集:af】
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